仕入債務売上債権比率とは

Facebook
X
Email
Print
目次

財務指標の計算式・意味

計算式
仕入債務売上債権比率=売上債権合計÷仕入債務合計×100(単位:%)

仕入債務と売上債権のバランスを示す指標です。数値が低いほど良い指標となります。
財務指標の名前と計算式の並びが逆になっている点が気になりませんか?一般的に、財務指標の名前は分母が先で分子が後となることが多いため、それに倣って命名しています。

財務指標理解の基礎知識

売上債権は、売上後に入金まで時間がある場合に発生する勘定科目です。売掛金・受取手形・電子債権・契約資産などの総称を指します。
仕入債務は、仕入後に支払まで時間がある場合に発生する勘定科目で、買掛金・支払手形・電子債務などの総称です。

売上または仕入後、入出金までの期間を「サイト」と言います。例えば、2月に売上げた場合、3月末に支払われればサイトは1ヵ月、4月末に支払われればサイトは2ヵ月となります。

売上債権はサイトが短く、仕入債務はサイトが長い方が、収入が早く支出が遅くなるため有利になります。

このサイトの長さは、取引先や業界、契約によって異なります。より有利な契約を結ぶことが重要です。

上図のように、売上債権の金額が同じ場合でも、仕入債務が少ないA社は資金負担が重く、仕入債務が多いB社は資金負担が軽くなります。

時系列分析と他の指標・数値との関連性

YKT 企業事例

仕入債務売上債権比率 時系列分析

下記のグラフは、YKTの仕入債務売上債権比率の時系列推移を示しています。2020年以降は上昇トレンドにあるため、悪化しているといえます。

YKT仕入債務売上債権比率
YKT仕入債務売上債権比率

仕入債務合計・売上債権合計 他の指標・数値との関連性

下記のグラフは、YKTの仕入債務合計の時系列推移を示しています。2020年以降、仕入債務は減少しています。通常、増収トレンドであれば仕入債務も増加すると考えられますが、2023年を除き増収傾向にあるにもかかわらず、仕入債務は減少しています。

YKT仕入債務10年グラフ
YKT仕入債務10年グラフ

下記のグラフは、YKTの売上債権合計および売上高の時系列推移を示しており、両者はほぼ同じ動きをしています。

YKT売上債権10年グラフ
YKT売上債権10年グラフ
YKT売上高10年グラフ
YKT売上高10年グラフ

売上債権は売上高と同じように増減していますが、仕入債務は減少トレンドにあります。売上高総利益率も低下トレンドであるため、仕入債務を発生させる商品や材料の仕入金額が安くなったことで仕入債務が減少した可能性は低いと考えられます。つまり、仕入債務のサイトが短くなった可能性があります。

財務指標利用の注意点

近年、下請法により仕入債務の短期化が求められており、多くの企業で仕入債務回転期間が短縮されています。それに伴い、仕入債務残高も相対的に減少傾向にあります。

まとめ

併せて読みたい

仕入債務回転期間について説明します。これは、仕入債務売上債権回転期間よりも基本的な財務指標であり、理解しやすいと思われます。

Facebook
X
Email
Print
山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
関連記事

AIスタートアップ「オルツ」による、売上高最大9割の水増し。これは単なる不正会計ではありません。IPO制度の信頼そのものを揺るがす、極めて異例かつ深刻な事態です。 2025年8月末をもって、東証は同社の上場廃止を決定。公 […]

任天堂の2025年3月期決算は、スイッチの販売減速により減収減益が確定しました。それでも次世代機「スイッチ2」への期待が、市場のムードをしっかりと支えています。スイッチ2は、十分な在庫を確保し「スタートダッシュ」を狙う戦 […]

キユーピーがついに動きました——アヲハタの完全子会社化。 これは単なる親子上場の解消ではありません。**財務の兆候に基づいた“静かな決断”**だったのです。 売上高総利益率(オレンジ)の悪化。それでも、売上高販管費率(黄 […]

古河機械金属が、地上鉱山技術を応用し深海のレアアース採掘に挑む。JOGMECと連携し試作機を開発、特許数は国内トップ級。米政権の支援姿勢も後押しに。日本EEZ内の資源発見や大平洋金属の事業化計画など、商用化への機運が高ま […]

新着記事
カテゴリーで探す
目次