当期純利益とは
当期純利益は会計期間に会社が獲得した儲けの金額です。
「全ての収益から全ての費用を差し引いて最後に残った利益」ともいえます。利益には売上高総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益等がありますが、どれも部分の収益から部分の費用を差し引いて計算した利益です。それぞれの利益に意味はありますが、「会社が獲得し、自分(会社)のものにした最終的な利益」が当期純利益です。
下図のように、当期純利益は貸借対照表の利益剰余金に毎期末加算されます。その意味では財務体質に影響を与える利益といえます。
財務諸表分析での着眼点
当期純利益が増加すると利益剰余金が増え、純資産が増えます。純資産の増加は貸借対照表に質的変化をもたらします。
借入金のある会社なら返済が開始され、負債が減るかもしれません。また、純資産の増加から総資産増加余力が生まれたと考え、更に借入金をして投資を増やすかもしれません。
真逆の動きに見えますが、どちらも合理性を持った経営判断といえます。
純資産の増加がもたらす次の一手を読むにはどうしたらよいでしょうか。
答えは「当期純利益」「有利子負債合計」の時系列散布図です。
注意点
日本基準の個別損益計算書の表記 フジ・メディア・ホールディングス
下記はフジ・メディア・ホールディングスの個別損益計算書の表示です。税引前当期純利益のあと、法人税等を差し引き、当期純利益を出しています。
日本基準の連結損益計算書の表記 フジ・メディア・ホールディングス
下記はフジ・メディア・ホールディングスの連結損益計算書の表示です。見慣れない方もいらっしゃるのではないでしょうか。個別の「税引前当期純利益」は「税金等調整前当期純利益」です。
法人税等を差し引いた後「当期純利益」と表示されていますが、その下に「非支配株主に貴帰属する当期純利益」「親会社に帰属する当期純利益」とあります。この場合、「親会社の株主に帰属する当期純利益」を財務分析上「当期純利益」として扱います。
「当期純利益」だけでなく「親会社株主に帰属する当期純利益」が計算される理由
下記の図を見て下さい。親会社が子会社を1社をもっていたとします。
連結損益計算書を作成すると当期純利益は150です。それが上記図の下から3行目の「当期純利益」です。親会社の株式の持ち分割合が60%の場合、40%は別の人や会社が株主(少数株主)です。もし親会社が「連結損益計算書上の当期純利益は150で当社の利益だ。」といえば非支配株主の利益はゼロになってしまいます。
本来子会社の当期純利益50のうち40%は非支配株主の分(非支配株主持ち分)ですので、それを差し引いてこそ親会社の正しい利益がわかるといえます。ですから非支配主に帰属すると思われる当期純利益を差し引いた金額を「親会社株主に帰属する当期純利益」とします。
米国基準の連結損益計算書の表記 富士フイルムホールディングス
下記は富士フイルムホールディングスの連結損益計算書の表示です。富士フイルムホールディングスは米国会計基準を採用しています。見慣れない方もいらっしゃるのではないでしょうか。個別の「税引前当期純利益」は「税金等調整前当期純利益」です。日本基準の連結と同じです。
持分法による投資損益が法人税と当期純利益の間に挟まっています。Ⅶは表現が少し違いますが内容は同じです。
IFRSの連結損益計算書の表記 楽天グループホールディングス
下記は楽天グループホールディングスの連結損益計算書の表示です。楽天グループホールディングスはIFRSを採用しています。3行目に当期純損失が出ていますが、非支配持ち分も含めた当期純利益(損失)を示します。
改めて「当期損失(利益)の帰属」という項目を提示し、「親会社の所有者」と「非支配持分」に分けています。
財務諸表分析上は「親会社の所有者」の値を「親会社に帰属する当期純利益」と認識します。
会計基準によって表示方法等が異なりますので注意が必要です。
少し宣伝させてください。この記事でも紹介したような勘定科目の表記の揺らぎを、財務諸表分析に利用できるよう整理し財務指標まで表示しているのが、企業力Benchmarkerです。
有価証券報告書を提出している企業(上場・非上場約5000社)をスムーズに分析できますので一度ご検討下さい。
まとめ
- 1当期純利益は全ての収益から全ての費用を控除した最終利益。
- 2当期純利益は貸借対照表の純資産に加算される。
- 3 当期純利益は純資産比率・固定比率・固定長期適合比率に影響する。
- 4 当期純利益の表示は会計基準等により異なる。
当期純利益の財務指標「売上高当期純利益率」について説明しています。
売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益についてをPLの構造の説明もしております。