財務指標の計算式・意味
計算式
総資産金融資産比率=(有価証券+投資有価証券+出資金)÷資産合計×100(単位:%)
企業が保有する総資産のうち、株式や債券などの金融資産がどれだけの割合を占めているかを示す指標です。この比率が高いほど、企業の資産構成において金融資産の比重が大きいことを意味します。財務の安定性や運用方針を評価するうえで参考となる数値であり、企業がどの程度リスク資産を保有しているかを把握するのにも役立ちます。
財務指標理解の基礎知識
資産は、本業に使用される実務用資産として保有される場合と、本業に十分な投資を行ったうえでの余資運用として、金融資産として保有される場合に分けられます。
金融資産は、投資額に対する利益率が低いこともあるため、過度に保有すると資本効率の低下を招く可能性があります。

時系列分析と他の指標・数値との関連性
下記は東映の総資産金融資産比率のグラフです。総資産のうち1/3は金融資産です。金融資産を持っていると受取配当金を得ます。受取配当金は営業外収益に計上されます。

下図は、東宝の営業効率に関する財務指標を示したグラフです。売上高営業利益率よりも売上高経常利益率が高くなっているのは、受取配当金が多く営業外収益として計上されているためです。

下記は東宝のBSバランスの推移です。金融資産も多く売上高営業利益率<売上高経常利益率の会社は純資産が潤沢であるケースが多くあります。


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財務指標利用の注意点
事業用資産は売却が難しく、仮に売却できたとしても大きな損失が発生する可能性があります。そのため、設備投資を抑制し、代わりに金融資産によって収益を得ようとする企業も多く見られます。こうした状況においては、投下資本に対して十分な利益を上げているかどうかを検証することが重要です。
まとめ
- 1 金融資産の比率は、財務の安定性や運用方針の評価、またリスク資産の保有状況を把握するための重要な指標です。
- 2 資産は、本業に使用される実務用資産として保有される場合と、本業に十分な投資を行ったうえでの余資運用として金融資産として保有される場合に分けられます。
- 3金融資産は、投資額に対する利益率が低いこともあり、過度に保有すると資本効率の低下を招く可能性があります。
- 4 東映の総資産に占める金融資産の比率は約3分の1であり、これにより受取配当金が得られ、営業外収益として計上されます。
- 5 東宝の財務指標では、受取配当金の影響により売上高営業利益率よりも売上高経常利益率の方が高くなっています。
- 6 東宝のバランスシートの推移からは、金融資産を多く保有し、売上高営業利益率よりも売上高経常利益率が高い企業は、純資産が潤沢であるケースが多いことが分かります。
- 7事業用資産は売却が難しく、損失が発生する可能性があるため、企業は設備投資を控え、代わりに金融資産で収益を得る傾向が見られます。そのような状況では、投下資本に対する利益の妥当性を検証することが重要です。
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