財務指標の計算式・意味
固定負債比率は、企業の財務安全性を示す指標の一つで、純資産に対する固定負債(長期借入金や社債など1年以上の返済期限がある負債)の割合を表します。計算式は以下の通りです。
固定負債比率 =(固定負債合計 ÷ 純資産合計)× 100(%)
この比率が高いほど、企業が長期負債に依存していることを意味し、財務の安定性に影響を与える可能性があります。一方で、固定負債を活用して成長を促す企業もあり、適正な水準は業界や経営方針によって異なります。
財務指標理解の基礎知識
固定負債比率を理解するには、貸借対照表の構造に当てはめて考えると分かりやすくなります。A社は固定負債が多く、純資産が少ないため、固定負債比率は150%です。一方、B社は固定負債が少なく、純資産が多いため、固定負債比率は67%となり、B社の方が良いと評価されます。
固定負債比率は、数値が小さいほど良い指標とされています。

時系列分析と他の指標との関連性
小僧寿しの事例
小僧寿しの固定負債比率は、2014年の97%から2023年には605%へと急増しています。2018年のグラフが途切れているのは、同年に債務超過となったため、分かりやすくする目的でデータを除外したためです。2019年は純資産がプラスになったものの、その額が僅少であったため、固定負債比率は5059%に達しました。
固定負債比率に慣れるために、視覚的に理解してみましょう。

以下は、小僧寿しのBSバランスの推移です。赤字が多く、純資産が減少傾向にある中で、2021年以降は負債が急増しています。
固定負債比率が悪化する(数値が大きくなる)とは、純資産(グリーン)と固定負債(ピンク)の関係を見ると、純資産に対して固定負債の割合が増加する状態を指します。

純資産の状況に関わらず、借金をして固定負債を増やし、果敢に事業を展開すべきだという考え方もあります。
9年前と直近期を比較し、固定負債比率が500%以上増加した企業を調べたところ、26社が該当しました。しかし、そのほとんどが企業力総合評価100ポイント以下の会社でした。
以下のグラフは、小僧寿しの企業力総合評価を示しています。

ワールドの事例
ワールドの固定負債比率は、2016年の802%から2024年には78%へと急減しています。
固定負債比率に慣れるために、視覚的に理解してみましょう。

以下は、ワールドのBSバランスの推移です。2018年までは純資産の増加がわずかでしたが、2019年に純資産を急増させました。これは、2019年に再上場を果たし、自己株式の処分によって純資産を40,740百万円増加させたためです。
固定負債比率が改善する(数値が小さくなる)とは、純資産(グリーン)と固定負債(ピンク)の関係を見ると、純資産に対して固定負債の割合が減少する状態を指します。

9年前と直近期を比較し、固定負債比率が500%以上減少した企業を調べたところ、9社が該当しました。そのほとんどが、企業力総合評価を改善させた会社でした。
以下のグラフは、ワールドの企業力総合評価を示しています。

固定負債比率が500%以上増加または減少する企業は、業績が急落したり急回復するケースが多く見られました。
では、固定負債比率は、通常の経営を行う企業にとってどのように活用すべきなのでしょうか。
コーナン商事の事例
コーナン商事の固定負債比率は、2015年の136%から2024年には112%へと緩やかに減少しています。
固定負債比率に慣れるために、視覚的に理解してみましょう。

以下は、コーナン商事のBSバランスの推移です。毎期、流動資産・固定資産・流動負債・固定負債・純資産が増加傾向にあります。純資産の増加は毎期順調に利益を上げていることを示し、固定資産の増加は積極的な投資を行っていることを示唆しています。また、流動資産と流動負債の増加から、増収が続いていると推察されます。

以下のグラフは、コーナン商事の営業効率に関する財務指標と数値を示したものです。
ホームセンター事業を展開するコーナン商事が増収する要因には、既存店舗の売上高の向上だけでなく、新規出店も含まれます。新規出店には設備投資が必要です。上記のBSバランスで固定資産が増加していること、また、以下の営業効率に関する財務指標・数値において増収(ブルーの棒グラフ)が見られることから、新規出店が行われていると推察できます。

コーナン商事の企業力総合評価は、順調に伸びています。
コーナン商事のように、固定負債比率を緩やかに減少させながら設備投資を行い、増収を達成し、純資産が着実に増加している企業は、現業が順調に推移しているといえます。


- 企業の成長が無料で一目でわかる
- 上場企業4000社、非上場企業1000社の最新の分析結果
まとめ
- 1 固定負債比率は、企業の財務安全性を示す指標の一つで、純資産に対する固定負債(長期借入金や社債など1年以上の返済期限がある負債)の割合。
- 2 固定負債比率の乱高下は経営状況に問題のあるケースが多い。
- 3 コーナン商事は固定負債比率の緩やかな改善があり、順調な経営状況といえる。
固定比率は、固定資産と純資産の関係の財務指標です。