財務指標の計算式・意味
現金預金÷流動負債合計×100(単位:%)
流動負債(短期支払が求められる債務)に対しいくら現金預金があるかを示します。
高ければ良い指標ですが、借入をして多額の現金預金を保有している場合は支払利息が発生し営業効率を悪化させます。
財務指標の理解の基礎知識
貸借対照表の負債(右側)は流動負債と固定負債に分けられます。
負債は将来返済を迫られますが、早いもの、ゆっくりなもの様々で、早いものは流動負債、ゆっくりなものは固定負債の区分に分けられます。
流動負債は1年以内に返済を迫られる債務です。
その債務に対してどれくらいの準備があるかは流動資産を確認します。
貸借対照表の資産(左側)は流動資産と固定資産に分けられます(繰延資産もありますが取り上げません)。
資産(左側)は資金の運用状態を示しますが、運用形態によって流動性は様々です。
流動性は「支払のしやすさ」です。
現金預金は流動性そのものです。
下記の図を見て下さい。流動資産は流動性の高さで3つに分けられます。
分母・分子の詳説
分母
分母:流動負債
主に1年以内に返済する予定のある短期の負債
分子
分子:現金預金
時系列の動きをどう読むか
以下のグラフはコロプラの流動性財務指標・数値グラフです。
青色折れ線グラフが現金預金比率の推移です。
大きな改善トレンドです。
下の青色面グラフは現金預金の推移、赤色折れ線グラフは流動負債合計の推移です。
現金預金増加、流動負債減少で現金預金比率は急速に改善しています。これほど現金預金を持つ必要はなさそうです。
他の財務分析指標との関係性
流動性財務指標内での関係性
現金預金比率は当座比率・流動比率に影響を与えます。
現金預金は当座資産に含まれ、当座資産は流動資産に含まれるためです。
当座資産=現金預金+売上債権+有価証券+その他当座資産
流動資産=当座資産+棚卸資産+その他流動資産
以下のグラフはコロプラの流動性財務指標・数値グラフです。
現金預金比率の動きと当座比率・流動比率の形状が似ています。分母は3指標とも流動負債です。
現金預金は多ければ安心ですが、受取利息が得られているか、借入をして多額の現金預金を保有している場合は支払利息が発生していないかの確認が必要です。現金預金の保有に仕方で営業効率に営業を与えます。
有形固定資産残高への関係性 日清食品ホールディングス事例
日清食品ホールディングスの事例を見てみましょう。現金預金比率の悪化が原因で当座比率・流動比率も悪化しています。実数を見るとより原因をイメージしやすくなりますから下に流動性の財務数値のグラフを示します。
オレンジ色の部分は売上債権や有価証券等の現金を除く当座資産、グレイ色の部分は棚卸資産やその他流動資産、赤い折れ線グラフは流動負債です。この3つは時系列で少しずつ増加しています。いずれも増収になるとそれにつれて増加していく指標です。
現金預金はどうでしょうか。儲けが出て当期純利益が計上されば、現金が得られますがこれはあまり増加していません(青色部分)
下の売上高の推移グラフ、売上高当期純利益率のグラフを合わせ見れば、現金預金だけが増加していないことがよくわかります。
なぜ現金預金が増加しないのでしょうか。BSバランスを確認します。
ジワジワと原因に迫ってきました。見事なBSバランスの推移です。純資産が安定して増加しているので現金預金が増えそうですが増えていない、固定資産の増加に流れたのかもしれませんね。一体固定資産の何が増えたのでしょうか。有形固定資産が増加しています。こんな大きな規模になっても金融資産を増やさず現業一筋であると読めます。
現金預金比率の悪化は現金預金で設備投資を買っているからでしょう。10年間の当期純利益額総額は321,893百万円、有形固定資産増加額(簿価)は168,324百万円なので余裕なのです。ちなみに2015~2024年の長期借入金増加額は12,450百万円です。
売上高が上がればそれに伴い、売上債権・棚卸資産・仕入債務が増加するもので、更に利益が出ていれば現金預金が増えます。でも現金預金だけは、その他と違い使ってしまえば減ります。当然と言えば当然ですが、理由が明確化するとその会社のスタンスがはっきりします。
まとめ
- 1 現金預金は最も流動性が高い資産で、現金預金比率が高いと最も支払い易い状態といえる。
- 2 現金預金の増加・流動負債の減少が改善要因となる。
- 3 現金預金の状態で受取利息を得られているか、有利子負債による資金調達で多額の支払利息が発生していないかを確認する。
- 4 現金預金比率は営業効率に影響を与える。
- 5 現金預金比率は営業効率の影響を受ける。
- 6 現金預金比率は営業効率の影響を受けて増加して使ってしまえば改善しない。
複数の短期資金繰りの財務指標を統合した指標。