資生堂が敏感肌向けブランド「dプログラム」を刷新し、1割を超える価格改定に踏み切りました。これまで「クレ・ド・ポー ボーテ」や「SHISEIDO」など高価格帯ブランドを中心に展開してきた同社にとって、今回の決断は極めて異例であり、確かな覚悟がにじむ戦略転換です。国内市場では、花王の「キュレル」がシェアの頂点に立ち、dプログラムは価格の高さや商品構成の複雑さにより後れを取っていました。そこで資生堂は、5種類あった商品構成を3種類に集約し、選びやすさを重視。価格も400〜600円引き下げ、これまでの若年層に加えて35歳以上の層にもアプローチします。さらに、潤いを内側から引き出すキシリトール成分を採用し、角層バリア機能を整えるという独自の科学的アプローチで差別化を図ります。これは単なる価格競争ではなく、ブランドとしての誇りと信頼を再構築する“反撃の一手”です。
一方、財務の視点から資生堂の現状を見ると、企業力総合評価は山型を描きながらも悪化傾向にあり、主な原因は営業効率の低下にあります。財務指標に注目すると、売上高販売費及び一般管理費比率(黄線)のコントロールの難しさが際立っており、特に2022年から2024年にかけては、売上高総利益率(オレンジ線)を食いつぶす形で、営業損失にまで至ったことが読み取れます。一方、生産効率は改善傾向にあり、2019年までは従業員数(青棒)を維持しつつも、一人当たり売上高(オレンジ線)などの指標が向上しており、現場で働く従業員たちの努力が数字に表れていました。しかしその後、減員によって再び一人当たり売上高を高めるという構図が続いており、「努力しても経営は良くならない」という空気が10年にわたって漂っていることが、士気の低下を招く懸念となっています。
資生堂にいま求められているのは、ブランドの再構築にとどまらず、そこで働く一人ひとりが希望を持ち、努力が報われる経営の実現です。企業としての本質的な価値を問い直すこのタイミングこそが、未来への新たな扉を開く機会となることを願ってやみません。
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