財務指標の計算式・意味
売上高税引前当期純利益率は、企業の売上高に対する税引前当期純利益の割合を示す指標です。企業の本業およびその他の営業外活動を含めた全体の収益性を測るのに用いられます。税金の影響を排除することで、異なる税制の企業間での比較がしやすくなります。この指標が高いほど、企業の収益性が高く、効率的に利益を上げていることを意味します。経営判断や投資分析の際に、他の指標と併せて活用されます。
財務指標理解の基礎知識
売上高税引前当期純利益率を理解するには、まず税引前当期純利益の概念を理解することが重要です。以下に、文具店の損益計算書の構造を示した図があります。税引前当期純利益は、損益計算書の比較的下の方に位置し、本業での利益に加えて、財務損益や突発的な損益を考慮した利益です。これより下の項目では、法人税等を差し引くことで最終的な当期純利益が算出されます。

時系列分析と他の指標との関連性
下記は、フジオフードシステムの営業利益、売上高営業利益率、売上高経常利益率、売上高税引前当期純利益率を示したグラフです。
2019年まで
営業利益が減少し、3つの売上高利益率も低下したことで、収益性が悪化しました。2020年
営業損失を計上し、3つの利益がすべてマイナスとなりました。2021年
営業損失がさらに拡大しましたが、経常利益を確保したため、売上高経常利益率と売上高税引前当期純利益率はプラスに転じました。2022年
2020年と同様の動きを示しました。2023年
営業利益が黒字に転換し、3つの売上高利益率もすべてプラスになりました。

以上のような業績推移をたどったフジオフードシステムには、以下の特徴が認められます。
(1) 売上高営業利益率の下落を放置
2014年の8.91%をピークに、7.09% → 6.91% → 7.25% → 6.25% → 3.80%(2019年)と毎期約1%程度悪化し続けていますが、反転の兆しが見られません。
通常、数値に注視する企業であれば、このような下落傾向は問題視し、改善策を講じるのが一般的です。
(2) 売上高営業利益率が低下する中でも、売上高税引前当期純利益率が悪化していない
本業に深刻な問題が発生している場合、通常は適切な対応として特別損失を計上し、その結果として売上高税引前当期純利益率が大幅に悪化するケースが多く見られます。しかし、フジオフードシステムではそのような傾向が確認されません。

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財務指標利用の注意点
売上高税引前当期純利益率と売上高経常利益率の差は、特別損益によって生じます。特別損益は、企業が変革を行う際に計上されることが多いため、その動向を注意深く観察することで、変革の兆候を捉えることができます。
まとめ
- 1 売上高税引前当期純利益率は、企業の売上高に対する税引前当期純利益の割合を示し、本業および営業外活動を含めた全体の収益性を測る指標です。
- 2 この指標は税金の影響を排除することで異なる税制の企業間比較を容易にし、経営判断や投資分析の際に活用されます。
- 3 損益計算書において、税引前当期純利益は本業の利益に財務損益や突発的な損益を加えたものであり、その下で法人税等が控除されることで最終的な当期純利益が算出されます。
- 4 フジオフードシステムは2014年の8.91%をピークに売上高営業利益率が2019年まで毎期約1%ずつ低下し続けましたが、適切な改善策が講じられた形跡は見られません。
- 5フジオフードシステムは売上高営業利益率が低下しているにもかかわらず、売上高税引前当期純利益率が大幅に悪化していない点も特徴的であり、通常であれば本業の問題が発生した際には特別損失を計上することでこの指標も悪化するはずですが、その傾向は確認されません。
- 6 売上高税引前当期純利益率と売上高経常利益率の差は特別損益によって生じるため、特別損益の動向を観察することで企業の変革の兆候を捉えることができます。
吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。