投資活動によるキャッシュフローとは
ザクっと概略を説明
投資活動によるキャッシュフローとは投資にかかわるキャッシュの動きを示しています。
投資の範囲は、大きく設備投資と運用投資に分かれます。設備投資は工場を建てたり機械を買ったりすることです。運用投資は余資で有価証券・投資有価証券を購入・貸付金・定期預金等で受取配当金や受取利息を得るために行います。売却も投資活動のキャッシュフローに含まれます。
購入するときはキャッシュアウトですからマイナス表示、売却の時は通常キャッシュインですのでプラス表示です。
キャッシュフロー計算書の説明は「営業キャッシュフロー」の記事を参照してください。こちらから
投資キャッシュフローはどう計算するか
長谷工コーポレーションの2023年3月期・2024年3月期の投資活動によるキャッシュフロー計算書を示します。投資活動によるキャッシュフローは一番下の金額です。
2023年3月期は55,446万円のキャッシュアウト、2024年3月期は39,846百万円のキャッシュアウトです。
定期預金の預け入れ、払い戻し
定期預金に預け入れると、普通預金口座から出金しますのでキャッシュアウトとなり、マイナスで表示されます。逆に払い戻されると入金しキャッシュインするため、プラスで表示されます。
長谷工コーポレーションは2024年定期預金に31百万円預入しています。
ここで注意したいのは、定期預金の定義です。原則として一定期間払い戻すことができない定期預金は現金や普通預金とは区別され、その中でも預入期間が3か月を超えるものは投資キャッシュ・フローとして処理します。
短期的視点では引き出しが不可能ということで流動性がなく、現金預金と同じ扱いにはできないということです。
有価証券・投資有価証券の取得・売却償還
有価証券は購入するとき出金しますので、キャッシュアウトでマイナス表示です。
有価証券は売却すると売却代金が入金されるので、キャッシュインでプラス表示されます。社債が償還される場合も同様です。
売却益について気になる方は営業キャッシュフローに説明しています。こちらから
売却益は売却価格1200のうちの200ですので、投資キャッシュフローには含まれているということになります。
取得から売却まで金額が変わることがあります。会計的に損益を出しますが、現金は動かないので投資キャッシュフローでは考慮する必要がありません。営業キャッシュフローでは、「支出を伴わない費用・収入を伴わない利益」として調整が必要です。
固定資産購入・売却
固定資産は有価証券と似ています。固定資産は減価償却等により、必ず帳簿価格が購入価格を下回ります。固定資産を購入するとき出金しますのでキャッシュアウトでマイナス表示です(取得価格)。固定資産は売却すると売却代金が入金されるのでキャッシュインでプラス表示されます(売却価格)。全く価値がなく、お金を払わないと撤去できない場合は撤去費用はマイナス表示になります。
売却益については有価証券と同様です。
購入価格と帳簿価格のズレを生む減価償却費について気になる方は こちらから
貸付金・敷金・保証金・その他
出金をマイナス表示、入金をプラス表示します。
企業事例 長谷工コーポレーション
投資キャッシュフローの半分は運用投資
再度、長谷工コーポレーションの2023年3月期、2024年4月期の投資キャッシュフローを示します。
投資キャッシュフローは、2023年△55,446百万円、2024年△39,846百万円ですね。
PLをみると同期の売上高は1,027,276百万円、1,094,421百万円となっていますので、売上高の5%程度を投資に振り向けています。
内容を見てみると、一番多いのは有形及び無形固定資産の取得により支出です。それ以外はほぼ運用投資です。
投資キャッシュフローはマイナスだから投資が活発で良い、プラスなら問題など単純に評価できません。企業規模により変動の過多もあります。投資活動を活発にしたのち回収に集中する時期かもしれません。
他の財務指標とのバランスで見ていくことが重要です。
まとめ
- 1投資キャッシュフローは、設備投資と運用投資を扱う。設備投資は機械やソフトウエア等有形・無形固定資産に関係する。運用投資は投資有価証券の売買などを扱う。
- 2 売却損益は投資キャッシュフローに含め、営業キャッシュフローでは調整して削除する。
- 3投資キャッシュフローは時系列に他の財務指標と較べながら読む。
財務活動によるキャッシュフローについて解説しています。