租税公課とは

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租税公課とは

租税公課は、企業が納付する税金や公的な負担金を処理するための勘定科目です。具体的には固定資産税・自動車税・印紙税・登録免許税などがあります。

財務諸表分析手法 租税公課

租税公課の時系列推移 フジ住宅

下記はフジ住宅の租税公課および有形固定資産取得原価の時系列グラフです。グラフからは、有形固定資産に対する租税公課の負担が相対的に軽減されていることが示されています。固定資産税のコストダウンなどを行った可能性があります。

ただし、租税公課には他の要因も含まれるため、正確な要因は特定できません。自社の場合は、種類別に分類することで課題を抽出することが可能です。

フジ住宅 租税公課

租税公課の値はどこに載っているか

販管費の内訳項目は表示場所が複雑

いざ「租税公課について自分で分析しよう!」と思ったときに、まず気を付けるべきなのが開示の有無です。

前提として、租税公課は「販売費および一般管理費」の一項目です。

このような販管費の内訳項目は、開示の有無や開示場所が複雑であるため、本稿では解説していきます。

なお、分析対象の企業によっては、そもそも非開示のため分析できない場合もあるため、注意が必要です。

租税公課がPL本表に載っているケース

非上場企業の一般の決算書で租税公課は基本的に独立掲記されています。

有価証券報告書を提出する企業(上場企業等)では、租税公課をPL本表で開示しているのは約5%(約270社・2024年)です。残りの約95%の企業ではPL本表には載っていません。そのような企業であっても、租税公課が販売費及び一般管理費合計の概ね10%以上の場合などは注記としてPL本表の数ページ後に開示されています。

なお、企業力Benchmarkerでは、PL本表で開示されている租税公課は値を取得していますが、注記のみで開示されている場合には値を取得していません。

以降の章では、有価証券報告書を提出する企業について会計基準ごとに解説します。

日本基準を採用する企業の場合

租税公課をPL本表で開示する約270社は、会計基準として「日本基準」を採用して1います。ドメスティック産業を主軸とする企業などは、ステークホルダーにも馴染みの深い日本基準で財務諸表を開示することが多いです。

ただ、日本基準を採用しているものの、租税公課を含む販管費内訳項目をPL本表で開示していない企業もたくさんあります。その場合は注記を確認しましょう。

KeePer技研は租税公課をPL本表に掲記しています。ほぼ全ての勘定科目を積極的に開示しています。

Keeper技研販売費及び一般管理費 日本基準 個別PL
Keeper技研販売費及び一般管理費 日本基準 個別PL

米国会計基準を採用する企業の場合

次に、米国会計基準を採用する企業についてです。前述のとおり、日本基準採用の企業でしかPL本表に租税公課の開示はありません。

米国会計基準では「販売費及び一般管理費」の値のみが本表に載っています。租税公課の開示の有無については、各注記を確認していく必要があります。

なお、別の論点となりますが、米国会計基準では販管費及び一般管理費の額とは区別して、研究開発費が独立掲記される場合も多いです。

富士フイルムホールディングス 営業利益まで 米国会計基準
富士フイルムホールディングス 連結PL 米国基準 

IFRSを採用する企業の場合

次に会計基準でIFRSを採用する企業についてです。IFRS(国際会計基準)は、グローバル展開する企業が採用する傾向にあります。世界的に認知されている会計基準ですので、海外投資家や海外の企業をステークホルダーに持つ場合は、IFRSを採用するメリットがあります。

IFRSを採用する企業はおおむね以下のような表記になり、連結PL本表には租税公課は表記されていません。注記を確認しに行く必要があります

ワールド IFRS連結損益計算書 営業利益まで
ワールド 連結PL IFRS

まとめ

併せて読みたい

有形固定資産について詳細説明しています。

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山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
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