その他人件費とは

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その他人件費とは

人件費とは、企業が従業員を雇用するために支払う費用の総称です。基本給や各種手当、法定福利費、福利厚生費、賞与、特別手当、退職金、役員報酬、賃金(工場など現場社員の給与)、アルバイト等の雑給を指します。

特定された人件費以外をその他人件費と言います。

その他人件費 費目分類事例

セコム

下図はセコムの連結損益計算書の人件費部分です。会社の勘定科目の選択は様々で、財務諸表分析を行う上で整理して認識しないと、時系列分析や比較分析に耐えられません。

そこで企業力Benchmarkerでは、セコムの人件費をこのように分けました。給与及び手当は給与、賞与は賞与、賞与引当金繰入額は賞与、退職給付費用はその他人件費、役員退職慰労引当金繰入額はその他人件費、その他の人件費はその他人件費に格納しております。

セコム 人件費内訳
セコム 人件費内訳

日本ライフライン

下図は日本ライフラインの連結損益計算書の人件費部分です。

役員報酬は役員報酬、給与及び手当は給与、退職給付費用はその他人件費、賞与引当金繰入額は賞与、役員賞与引当金繰入額は賞与、役員株式報酬引当金繰入額はその他人件費、法定福利費は法定福利費です。

日本ライフライン 人件費内訳
日本ライフライン 人件費内訳

その他人件費の分析ナレッジ

その他人件費は、主要な人件費の費目に分類されなかった費目の寄せ集めのため、分析ナレッジは今のところありません。

経費の中で人件費に該当する額を把握することは重要で、その他人件費という受け皿がないと集計できず、分析の基礎が揺らぎ、無視することはできません

その他人件費の値はどこに載っているか

販管費の内訳項目は表示場所が複雑

いざ「その他人件費について自分で分析しよう!」と思ったときに、気を付ける必要があるのが開示の有無です。」

前提として、その他人件費は「販売費および一般管理費」の1項目で、各社各様の費目で開示しています。

このような販管費の内訳項目は、開示の有無や開示場所が複雑ですので、解説していきたいと思います。

分析する企業によっては、そもそも非開示で分析できない場合もありますので注意が必要です。

その他人件費がPL本表に載っているケース

非上場企業の一般的な決算書では、その他人件費は基本的に独立して記載されています。

有価証券報告書を提出する企業(上場企業等)では、その他人件費をPL本表で開示しているか、注記としてPL本表の数ページ後に開示されています。

なお、企業力Benchmarkerでは、PL本表で開示されているその他人件費の値は取得していますが、注記のみで開示されている場合には値を取得していません。

以降の章では、有価証券報告書を提出する企業について、会計基準ごとに解説します。

日本基準を採用する企業の場合

その他人件費をPL本表で開示する会社は、会計基準として「日本基準」を採用しています。ドメスティック産業を主軸とする企業などは、ステークホルダーにも馴染みの深い日本基準で財務諸表を開示することが多いです。

ただし、日本基準を採用しているものの、その他人件費を含む販管費内訳項目をPL本表で開示していない企業も多くあります。

下記は大和ハウス工業のPL本表の販売費及び一般管理費の開示です。その他人件費に該当するのは、退職給付費用です。

大和ハウス工業 販売費及び一般管理費
大和ハウス工業 販売費及び一般管理費

米国会計基準を採用する企業の場合

次に、米国会計基準を採用する企業についてです。前述のとおり、日本基準を採用する企業でしかPL本表にその他人件費の開示はありません。

米国会計基準では「販売費及び一般管理費」の値のみが本表に載っています。その他人件費の開示の有無については、各注記を確認していく必要があります。

なお、別の論点となりますが、米国会計基準では販管費及び一般管理費の額とは区別して、研究開発費が独立掲記される場合も多いです。

富士フイルムホールディングス 営業利益まで 米国会計基準
富士フイルムホールディングス 連結PL 米国基準 

IFRSを採用する企業の場合

次に、会計基準でIFRSを採用する企業についてです。IFRS(国際会計基準)は、グローバル展開する企業が採用する傾向にあります。世界的に認知されている会計基準ですので、海外投資家や海外の企業をステークホルダーに持つ場合は、IFRSを採用するメリットがあります。

IFRSを採用する企業はおおむね以下のような表記になり、連結PL本表にはその他人件費は表記されていません。注記を確認しに行く必要があります。

ワールド IFRS連結損益計算書 営業利益まで
ワールド 連結PL IFRS

まとめ

併せて読みたい

財務諸表分析で必要な人件費合計について解説します。

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山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
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