「当期純利益」が増えると「有利子負債」は減るか
当期純利益が計上されればそれで借入金を返し有利子負債が減るのか、更に投資して有利子負債が増えるのか経営判断はいろいろです。有利子負債の増減を確認して会社の向かう方向を推察します。
「当期純利益」「有利子負債合計」の散布図
当期純利益と有利子負債合計を2軸に置き、時系列の散布図(直線)を作成します。
x軸:当期純利益 y軸 有利子負債 ×:初年度 ◆:最終年度(下図は非表示)
×の右側へ動けば当期純利益が増加し、左へ動けば減少することを意味します。
×の上側へ動けば有利子負債が増加し、下側へ動けば減少します。ゼロ未満はありません。
10期を通じどの方向に行くかで会社の方針を推察します。

企業事例
あらた
当期純利益は増収トレンド・有利子負債散布図が減少トレンドです。じわじわ財務体質をかいぜんする慎重な会社なのかもしれません。

あらたのBSバランスを見てみましょう。じわじわとした純資産の増加と総資産の増加がわかります。総資産も急増させることなく純資産比率を改善させています。慎重です。

あらたの営業効率財務指標・数値です。着実な増収・売上高販売費及び一般管理費の低減が見事です。売上高総利益率の低減は問題があります。それにしてもどの指標もじわじわと動きます。

あらたの臨時雇用従業員数比率と売上高営業利益率の散布図です。10年間ほとんど臨時雇用従業員数比率は変化しない中、売上高営業利益率を一直線に改善させています。

あらたは経営方針がブレません。PLもBSも人も良く見て経営する会社です。
イオンモール
イオンモールは当期純利益の多寡にかかわらず一貫して有利子負債を増加させます。有利子負債の増加はBSに何をもたらしているのでしょうか。

イオンモールは長期有利子負債(固定負債)を増加させ固定資産を増大させています。中でも有形固定資産を増加させています。こうなってくると有形固定資産を増加させて収益を獲得できているかが気になります。

イオンモールの営業効率の財務指標群の統合指標を示します。高い位置にすいいしていますが2021年024月期に悪化して回復していません。

イオンモールの財務指標・財務数値のグラフを見てみましょう。売上高総利益率の悪化が止まらない中増収は達成しています。店舗(有形固定資産)を作らなければ増収にならないので計画どおり借入金をして実行しているのでしょう。
店を作れば人も必要です。生産効率を見てみましょう。

臨時雇用従業員数比率と売上高営業率の散布図を示します。人手不足の昨今の状況からか正社員の比率を増やしていますが売上高営業率は悪化の一途です。
イオンモールは増収計画を着実に実行できる反面、BSやPL・人の管理に課題があるようです。


- 指標を選ぶだけですぐに散布図が表示されるから
- 事務作業ナシで企業分析がサクサク進みます!(上場企業等)
まとめ
- 1 当期純利益・有利子負債散布図は、当期純利益の増減が有利子負債の増減に与える影響を考推察するために利用する。
- 2 当期純利益が上がって有利子負債を返済する会社もあれば増加させる会社もある。
- 3 当期純利益・有利子負債の散布図は直接的には財務体質を改善する志向がわかる。

非正規の従業員数の割合が変化することによって、会社の儲けはどのように影響するのか、散布図を用いて紐解きます。企業事例を用いて解説します。