旅費交通費とは
旅費交通費とは、業務に関連して移動する際に発生する費用を指します。具体的には、以下のようなものが含まれます。
- 交通費(電車代・バス代・タクシー代・航空券代・高速道路料金・駐車料金)
- 宿泊費(ホテル・旅館代)
- 出張手当
- その他(レンタカー代・ガソリン代)
ただし、車両費の勘定科目がある場合、ガソリン代など車両に関連する費用は旅費交通費ではなく、車両費に計上します。
財務諸表分析手法 旅費交通費
旅費交通費の初年度比 コロナを経て TOPPANホールディングス
下記は、TOPPANホールディングスの旅費交通費・売上高・従業員数の初年度比を示したグラフです。
コロナ禍により人の移動が制限され、旅費交通費が大幅に減少しました。当初は「人が動くことが重要」と考えられていましたが、実際には在宅勤務やオンライン業務でも十分に対応できることが明らかになりました。その結果、コロナ前のように旅費交通費をかけなくても業務を継続できる状況となっています。
これに伴い、売上高に対する販売費及び一般管理費の比率も低下しました。

初年度は異常値でないことを条件に任意で決める。
旅費交通費はどこに載っているか
いざ「旅費交通費を自分で分析しよう!」と思ったときに、注意すべき点は開示の有無です。
前提として、旅費交通費は「販売費および一般管理費」の一項目に含まれます。
このような販管費の内訳項目は、開示の有無や開示場所が複雑であるため、詳しく解説していきます。
また、分析対象の企業によっては、そもそも非開示のため分析できない場合もあるため、注意が必要です。
旅費交通費がPL本表に載っているケース
非上場企業の一般的な決算書では、賃借料は基本的に独立して掲記されています。
一方、有価証券報告書を提出する企業(上場企業等)では、旅費交通費をPL本表で開示している企業は約5%(約260社・2024年)にとどまります。 残りの約95%の企業では、PL本表には旅費交通費が記載されていません。ただし、これらの企業でも、旅費交通費が販売費及び一般管理費合計の概ね10%以上を占める場合などは、PL本表の数ページ後の注記に開示されることがあります。
なお、企業力Benchmarkerでは、PL本表で開示されている旅費交通費の値は取得していますが、注記のみで開示されている場合は取得していません。
以降の章では、有価証券報告書を提出する企業について、会計基準ごとに解説します。
日本基準を採用する企業の場合
旅費交通費をPL本表で開示している約260社は、会計基準として「日本基準」を採用しています。ドメスティック産業を主軸とする企業などは、ステークホルダーにも馴染みの深い日本基準で財務諸表を開示することが多いです。
ただし、日本基準を採用している企業の中にも、旅費交通費を含む販管費の内訳項目をPL本表で開示していない企業も多く存在します。その場合は、注記を確認する必要があります。
KeePer技研は、旅費交通費を**「旅費及び交通費」**の勘定科目でPL本表に掲記しており、ほぼすべての勘定科目を積極的に開示しています。

米国会計基準を採用する企業の場合
次に、米国会計基準を採用する企業について説明します。前述のとおり、日本基準を採用している企業以外では、PL本表に旅費交通費が開示されることはありません。
米国会計基準では、「販売費及び一般管理費」の金額のみが本表に記載されており、旅費交通費の開示があるかどうかは、各注記を確認する必要があります。
なお、別の論点となりますが、米国会計基準では、販売費及び一般管理費とは区別して研究開発費が独立して掲記される場合も多くあります。

IFRSを採用する企業の場合
次に、IFRS(国際会計基準)を採用する企業について説明します。
IFRSは、グローバルに展開する企業が採用する傾向にあり、世界的に認知されている会計基準です。そのため、海外の投資家や企業をステークホルダーに持つ場合、IFRSを採用するメリットがあります。
IFRSを採用する企業の財務諸表は、一般的に以下のような表記となっており、連結損益計算書(PL本表)には旅費交通費が記載されていません。そのため、詳細を確認するには注記を参照する必要があります。


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まとめ
- 1 旅費交通費は、業務に関連して移動する際に発生する費用。
- 2 コロナ禍を経て旅費交通費削減が定着した。
- 3 日本基準は(連結)損益計算書上旅費交通費が表記される場合もあるが、米国会計基準・IFRSでは表記されない。
財務諸表分析上集計すべき従業員数を説明しています。