地代家賃とは

Facebook
X
Email
Print
目次

地代家賃とは

地代家賃とは、借りている土地や建物の使用に対して支払う費用を指します。具体的には、土地の地代、建物や部屋の賃料、駐車場代などが含まれます。

企業によっては、「賃借料」として処理される場合もあります。

なお、製造を担う工場で発生する地代家賃は、販売費及び一般管理費の区分には記載されず、製造原価に集計されるため、売上原価に含まれます。

財務諸表分析手法 地代家賃

下のグラフは、ウエルシアホールディングスの地代家賃と売上高の初年度比を示しています。

小売業は新規出店を増やせば売上高が上昇しますが、同時に地代家賃も増加するため、十分な売上を確保できているか注意を払う必要があります。

ウエルシアホールディングスは2017年と2023年に店舗数が急増したものの、売上高の伸びが地代家賃の増加に見合わず、初年度比に差が生じています。

ウエルシアホールディングス地代家賃初年度比10年グラフ
計算式
初年度比=当該年度÷初年度×100(単位:%)
初年度は異常値でないことが条件。

地代家賃はどこに載っているか

いざ「地代家賃を自分で分析しよう!」と思った際に注意すべき点の一つが、開示の有無です。

前提として、地代家賃は「販売費及び一般管理費」の一項目に含まれます。

このような販管費の内訳項目は、開示の有無や開示場所が企業ごとに異なり、複雑なケースも多いため、詳しく解説していきます。

また、企業によってはそもそも非開示となっており、分析が難しい場合もあるため、注意が必要です。

地代家賃がPL本表に載っているケース

非上場企業の一般的な決算書では、地代家賃は基本的に独立して掲記されています。

一方、有価証券報告書を提出する上場企業などでは、PL本表(損益計算書)で地代家賃を開示している企業は全体の約4%(約200社・2024年時点)にとどまります。残りの約96%の企業ではPL本表には記載されていません。ただし、地代家賃が販売費及び一般管理費合計の約10%以上を占める場合などには、注記としてPL本表の数ページ後に開示されることがあります。

なお、企業力Benchmarkerでは、PL本表で開示されている地代家賃の数値を取得していますが、注記のみで開示されている場合には取得していません。

以降の章では、有価証券報告書を提出する企業について、会計基準ごとに解説していきます。

日本基準を採用する企業の場合

PL本表で地代家賃を開示している約200社は、いずれも「日本基準」を採用しています。ドメスティック産業を主軸とする企業などは、ステークホルダーにとって馴染みの深い日本基準で財務諸表を開示する傾向があります。

しかし、日本基準を採用している企業の中でも、地代家賃を含む販管費の内訳項目をPL本表で開示していない企業は多く存在します。その場合は、注記を確認する必要があります。

例えば、ワークマンは地代家賃をPL本表に掲記しており、ほぼ全ての勘定科目を積極的に開示しています。

ワークマン販売費及び一般管理費 日本基準 個別PL
ワークマン販売費及び一般管理費 日本基準 個別PL

米国会計基準を採用する企業の場合

次に、米国会計基準を採用する企業について説明します。

前述のとおり、日本基準を採用する企業では一部の企業がPL本表で地代家賃を開示していますが、米国会計基準では地代家賃がPL本表に記載されることはほとんどありません。

米国会計基準では、PL本表には「販売費及び一般管理費」の総額のみが掲載されます。そのため、地代家賃の開示の有無については、各企業の注記を確認する必要があります。

また、別の論点として、米国会計基準では「販売費及び一般管理費」とは別に、研究開発費を独立して掲記するケースが多い点も特徴の一つです。

ワールド IFRS連結損益計算書 営業利益まで
ワールド 連結PL IFRS

まとめ

併せて読みたい

売上高について説明しています。

Facebook
X
Email
Print
山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
関連記事

営業活動キャッシュフローと投資活動キャッシュフローから、企業の傾向を把握したいと思ったことはありませんか。投資を行うには資金が必要であり、営業キャッシュフローが不足している場合は、財務キャッシュフローで補って投資を行いま […]

「当期純利益」が増えると「有利子負債」は減るか 当期純利益が計上されればそれで借入金を返し有利子負債が減るのか、更に投資して有利子負債が増えるのか経営判断はいろいろです。有利子負債の増減を確認して会社の向かう方向を推察し […]

財務分析をしていて臨時雇用従業員数の比率が下がると営業利益はどうなるか気になりませんか。正社員が増加するので人件費が上がって利益が圧迫されるか、士気が上がって人件費の増加を上回る利益が得られるか、臨時雇用従業員の離職が減 […]

財務分析をしていて、従業員数が増えたときに1人当たり売上高はどうなるか気になりませんか。従業員数が増加すれば、仕事の質も高く量も多くできるので1人当たり売上高は増加するのでしょうか。それとも新人が入ってきて彼らが育つまで […]