接待交際費とは
接待交際費とは、企業が業務上の目的で、取引先や顧客との関係を円滑にするために支出する費用を指します。
接待交際費は、関係性を構築し売上を向上させる、取引において便宜を図ってもらうなど、何らかの目的を持って支出されるものです。
財務分析手法 接待交際費
取引先獲得や増収を目的に支出するとした場合
取引先の獲得や増収を目的として接待交際費を支出する場合、売上高と接待交際費の初年度比を比較・考察することが有効です。
接待交際費が増えた時増収せず、減った時増収 大伸化学
下のグラフは、大伸化学の接待交際費と売上高の初年度比を示しています。接待交際費が増加した2016~2020年は増収せず、減少した2021~2022年には増収しています。
このことから、接待交際費が得意先接待以外に使用された、あるいは期待した効果が得られなかった可能性が考えられます。

初年度は異常値でないことを条件に任意で決める。
接待交際費が増えた時増収せず、減った時増収 イチネンホールディングス
下のグラフは、イチネンホールディングスの接待交際費と売上高の初年度比を示しています。接待交際費が増加した2016年は増収せず、減少した2021~2022年には増収しています。
このことから、接待交際費が得意先接待以外に使用された、あるいは期待した効果が得られなかった可能性が考えられます。

図らずも、任意で選んだ企業においては、接待交際費の有効性を数値で確認することはできませんでした。
接待交際費は何らかの目的をもって支出されるため、それぞれの支出とその効果を測定することが重要です。財務諸表分析では、全体的な傾向を把握することはできますが、個別の事象を特定することは困難です。
ただし、接待交際費の有効性に問題があるかどうかについて、おおまかに判断することは可能です。
接待交際費はどこに載っているか
いざ「接待交際費を自分で分析しよう!」と思ったときに、注意すべき点は開示の有無です。
前提として、接待交際費は「販売費および一般管理費」の一項目に含まれます。
このような販管費の内訳項目は、開示の有無や開示場所が複雑であるため、詳しく解説していきます。
また、分析対象の企業によっては、そもそも非開示のため分析できない場合もあるため、注意が必要です。
接待交際費がPL本表に載っているケース
非上場企業の一般的な決算書では、接待交際費は基本的に独立して掲記されています。
一方、有価証券報告書を提出する企業(上場企業等)では、接待交際費をPL本表で開示している企業は約2%(約80社・2024年)にとどまります。 残りの約98%の企業では、PL本表に接待交際費が記載されていません。ただし、これらの企業でも、接待交際費が販売費及び一般管理費合計の概ね10%以上を占める場合などは、PL本表の数ページ後の注記に開示されることがあります。
なお、企業力Benchmarkerでは、PL本表で開示されている接待交際費の値は取得していますが、注記のみで開示されている場合は取得していません。
以降の章では、有価証券報告書を提出する企業について、会計基準ごとに解説します。
日本基準を採用する企業の場合
接待交際費をPL本表で開示する約80社は、会計基準として「日本基準」を採用して1います。ドメスティック産業を主軸とする企業などは、ステークホルダーにも馴染みの深い日本基準で財務諸表を開示することが多いです。
ただ、日本基準を採用しているものの、接待交際費を含む販管費内訳項目をPL本表で開示していない企業もたくさんあります。その場合は注記を確認しましょう。
KeePer技研は接待交際費をPL本表に掲記しています。ほぼ全ての勘定科目を積極的に開示しています。

米国会計基準を採用する企業の場合
次に、米国会計基準を採用する企業についてです。前述のとおり、日本基準採用の企業でしかPL本表に接待交際費の開示はありません。
米国会計基準では「販売費及び一般管理費」の値のみが本表に載っています。接待交際費の開示の有無については、各注記を確認していく必要があります。
なお、別の論点となりますが、米国会計基準では販管費及び一般管理費の額とは区別して、研究開発費が独立掲記される場合も多いです。

IFRSを採用する企業の場合
次に会計基準でIFRSを採用する企業についてです。IFRS(国際会計基準)は、グローバル展開する企業が採用する傾向にあります。世界的に認知されている会計基準ですので、海外投資家や海外の企業をステークホルダーに持つ場合は、IFRSを採用するメリットがあります。
IFRSを採用する企業はおおむね以下のような表記になり、連結PL本表には接待交際費は表記されていません。注記を確認しに行く必要があります。


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まとめ
- 1 接待交際費とは、企業が業務上の目的で取引先や顧客との関係を円滑にするために使う費用。
- 2 売上高を上げるため支出された接待交際費は売上高と初年度比で考察する。問題があるかどうか大まかに把握できる。
- 3 接待交際費の個別の支出とその効果を測る方が明確化する。
- 4日本基準は(連結)損益計算書上接待交際費が表記される場合もあるが、米国会計基準・IFRSでは表記されない。
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