固定負債合計とは

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財務数値の意味

固定負債とは、貸借対照表において、1年を超えて返済や支払いの義務がある負債のことを指します。企業が長期的に資金を調達した場合などに発生し、財務状況を把握するうえで重要な項目の一つです。

 

財務指標理解の基礎知識

主な固定負債には、

返済期限が1年を超える長期借入金、

企業が資金調達のために発行する社債、

将来の退職金の支払いに備えた退職給付引当金、

さらにはリース契約による長期的な支払い義務である長期リース債務

などがあります。

なお、1年以内に支払い義務がある流動負債(例:買掛金や短期借入金)とは区別されます。

 

時系列分析と他の指標との関連性

下記は住友ファーマの固定負債の推移を示したグラフです。2021年以降、固定負債が急増しています。固定負債の増加は長期的な資金調達を示唆しているため、バランスシート(BS)の構成比の推移を確認します。

住友ファーマ固定負債グラフ
住友ファーマ固定負債グラフ

BSバランスの10年推移図を確認すると、2020年純資産・固定資産・流動負債の急増があり、2021年に1年遅れで固定負債の資金調達を行ったように見えます(流動負債も減少しています。)。固定資産の増加は投資であることが多くありますが、その後純資産が急激に縮小していきました。かなり心配な状況です。

住友ファーマBSバランス推移
住友ファーマBSバランス推移

下記は、安全性に関する財務指標の推移を示したグラフです。2021年の固定負債の増加は、長期的な資金繰りを目的としたものでしたが、グラフを見る限り、同年にわずかな改善はあったものの、安全性指標全体としては悪化傾向にあります。純資産比率は高く、固定長期適合比率も100%以内と健全な水準にありましたが、固定資産の増加が過度であった可能性があります。

住友ファーマ安全性財務指標
住友ファーマ安全性財務指標

この先の他の財務指標や数値については、営業効率に関連する可能性が考えられますが、本稿では取り上げません。

財務指標利用の注意点

固定負債が多い企業は、長期的な資金調達に依存している可能性がありますが、その分、返済能力や金利負担についても慎重に見極める必要があります。そのため、企業の財務健全性を評価する際には、固定負債の金額だけでなく、自己資本比率や固定比率といった他の財務指標と併せて分析することが重要です。

併せて読みたい

長期資金繰り指標の財務指標です。

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山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
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