財務指標の計算式・意味
受取利息や受取配当金などの金融収益と、支払利息などの金融費用の差額が、売上高にどの程度の影響を与えているかを測る指標です。数値がプラスであれば、金融収支が利益に貢献していることを示し、マイナスであれば金融費用が金融収益を上回り、財務面での負担が大きいことを意味します。
一方、売上高営業外損益比率は、金融収支に加えて、持分法投資損益や為替差損益などの営業外収支全体を含めた指標です。売上高金融収支比率が金融取引の影響に特化しているのに対し、売上高営業外損益比率は企業の本業以外の収支全体を評価するため、より包括的に企業の財務戦略を分析するのに適しています。
財務指標理解の基礎知識
下記はウイルグループの「BSバランス」です。同社は当期純利益を計上し、純資産を増加させています。純資産の増加に伴い、固定負債が減少していることが確認できます。これは、利益が出ることで現金が増え、まず借入金の返済に充てるためです。
では、借入金をほぼ返済し終えた場合はどうするのでしょうか。機械設備など現業への投資を行うこともありますが、余剰資金で金融資産を購入することもあります。
そのため、支払利息・受取利息・受取配当金の推移を追う「売上高金融収支比率」を確認することで、企業の業績や財務体質を把握することができます。

時系列分析と他の指標・数値との関連性
下記はキヤノンの「売上高金融収支比率」のグラフです。2014年はわずか1.7%でしたが、2023年には23.1%に急上昇しました。これにより、キヤノンが金融資産からの収益獲得に本格的に乗り出したといえます。

下記はキヤノンの「総資産金融資産比率」です。総資産に占める金融資産の割合は50%を超えました。本業の業績が低迷し、十分な改善策を見出せていない可能性があるのではないでしょうか。

以下はキヤノンの「売上高・売上高総利益率・売上高営業利益率」のグラフです。予想どおりの結果となりました。M&Aを実施しているものの、減収トレンドが続いており、勢いに欠ける状況です。
キヤノンは資金力があるため、売上高金融収支比率の改善を狙っているのかもしれません。


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財務指標利用の注意点
売上高金融収支比率が改善または高い数値を示していても、本業の業績が悪い場合と良い場合があります。キヤノンのように本業が低迷している場合、新たなビジネスチャンスを掴むために金融資産を増大させている可能性があります。
まとめ
- 1 売上高金融収支比率は、金融収益と金融費用の差額が売上高に与える影響を測る指標である。
- 2売上高金融収支比率がプラスなら金融収支が利益に貢献し、マイナスなら財務負担が大きいことを示す。
- 3 売上高営業外損益比率は、金融収支に加え、持分法投資利益や為替差損益などの営業外収支全体を含む指標である。
- 4 ウイルグループは当期純利益を計上し、純資産を増加させたことで、固定負債の減少が確認できる。
- 5 借入金を返済し終えた企業は、現業への投資や余剰資金での金融資産購入を行う場合がある。
- 6 キヤノンの売上高金融収支比率は2014年の1.7%から2023年には23.1%へと急上昇した。
- 7キヤノンは本業が低迷する中、金融資産を増やし、新たなビジネスチャンスを模索している可能性がある。
売上高金融収支比率によく似た指標です。営業外収益・費用の説明もしています。