経常利益増加率とは

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財務指標の計算式・意味

計算式
経常利益増加率 = (当期経常利益 - 前期経常利益)÷前期経常利益(絶対値)×100(単位:%)

経常利益が前期と比べてどの程度変動したかを示す指標です。数値が大きいほど良好な結果を示します。よく似た指標である『初年度比』は、特定の期を基準とし、その後の各期の割合を示す指標です。

財務指標理解の基礎知識

経常利益の性質上、常に黒字であることが求められます。経常利益の増減を直感的に把握できるようにした指標が経常利益増加率です。

積水ハウス経常利益増加率10年グラフ

上記は積水ハウスの経常利益と経常利益増加率のグラフです。10期すべて経常黒字ですが、2019年と2021年は減益となっています。この2期においては、経常利益増加率がマイナスとなっています。

下記は企業力Benchmarkerの経常利益増加率のグラフです。2019年と2021年の減益時には赤色ゾーンに沈みます。減益に対する危機感を持っていただくため、ゼロ以上を青色ゾーン、ゼロ未満を赤色ゾーンとして注意を促しています。

積水ハウス経常利益増加率 10年グラフ
積水ハウス経常利益増加率 10年グラフ

また、2015年、2018年、2022年、2023年は経常利益増加率が10%以上の増加となっており、高い数値を示しています。この期間に増益につながる取り組みが行われたはずですので、該当する期を調査します。

時系列分析と他の指標・数値との関連性

積水ハウス 企業事例

他の指標・数値のと関連性

下記は積水ハウスの経常利益増加率・売上高増加率・総資本増加率・従業員増加率のグラフです。ほとんどのデータがゼロより上にプロットされていることから、規模拡大を志向していることが分かります

経常利益増加率と売上高増加率の縦軸を比較すると、経常利益増加率の数値の方が大きいことが分かります。
これは、より利益率の高い増収を達成できていることを示しています

売上高増加率と従業員増加率の縦軸を比較すると、売上高増加率の数値の方が大きいことが分かります。
このことから、従業員の成長が進んでいると判断できます

総資産増加率も、ほとんどの期でゼロ以上となっています。
ただし、借入による投資なのか、利益剰余金・金融資産の増加によるものなのかは分かりません
しかし、売上高増加率の縦軸よりも数値が若干小さいため、資産効率にはプラスに働いていると推察できます

積水ハウス経常利益増加率・売上高増加率・総資本増加率・従業員数増加率
積水ハウス経常利益増加率・売上高増加率・総資本増加率・従業員数増加率

住友電設 企業事例

他の指標・数値のと関連性

下記は住友電設の経常利益増加率・売上高増加率のグラフです。2つの指標の動きは類似しており、売上高が増加すると経常利益も比例して増加する傾向が見られます
このことから、管理の行き届いた企業であると考えられます

住友電設経常利益増加率・売上高増加率
住友電設経常利益増加率・売上高増加率

小松製作所 企業事例

他の指標・数値のと関連性

下記は小松製作所の経常利益増加率・売上高増加率・総資本増加率・従業員増加率のグラフです。4つの指標の動きは類似しており、投資を行い従業員を増やすことで売上高が上昇し、それに伴い経常利益も増加する傾向が見られます

このことから、計画的な投資を行うことで、売上高と経常利益の両方を成長させることが可能であると考えられます

一方で、4つの指標がそれぞれ異なる動きを示す場合、社内の戦略や運営が統一されていない可能性があると推察されます

小松製作所経常利益増加率・売上高増加率・総資本増加率・従業員数増加率

財務指標利用の注意点

前期が経常損失となる場合があるため、分母は絶対値を用いて計算します

経常利益増加率・売上高増加率は、ゼロ以上を青色ゾーン、総資本増加率・従業員増加率はゼロ以下を青色ゾーンと設定しています。
これは、総資本や従業員数が増加する(赤色ゾーンに入る)こと自体が必ずしも悪いわけではないためです。
しかし、4つの指標すべてが赤色ゾーンに入る期は、企業の健全性に注意が必要であることを示します

まとめ

併せて読みたい

増加率とよく似た指標です。増加率が読みにくい場合は初年度比で分析するとよいでしょう。

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山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
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