純資産増加率とは

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財務指標の計算式・意味

計算式
純資産増加率 = (当期純資産 - 前期純資産)÷前期純資産(絶対値)×100(単位:%)


数値がプラスであれば純資産が増加し、マイナスであれば減少したことを示します。
増加が良いとされますが、増減の理由が重要な意味を持ちます。

よく似た指標である『初年度比』は、特定の期を基準とし、その後の各期の純資産の変動割合を示す指標です。

財務指標理解の基礎知識

下記の図のモデルでは、純資産増加率は100%となります。純資産は増加することが望ましい指標であるため、良い評価となります。

純資産増加率説明画像

その一方で、純資産の増加要因も考慮する必要があります。A社の1年後の貸借対照表における純資産の内訳が下図のとおりだったとします。①は資本金50、利益剰余金350、②は資本金250、利益剰余金150です。①は利益によって純資産が増加し、②は増資によって増加しています。同じ純資産増加率でも、その内訳には違いがあります。

純資産増加率・内訳説明画像

時系列分析と他の指標・数値との関連性

時系列分析

下記は大林組の貸借対照表(BS)推移です。緑が純資産を示しており、毎期10,000百万円以上増加しています。この増加が増資による資金調達か、利益によるものかは明確ではありませんが、いずれにせよ純資産を増加させ、投資(固定資産の増加)に資金を投入している点から、優れた企業であると評価できます。

大林組 純資産増加率9期毎期100億円以上増加
大林組 純資産増加率9期毎期100億円以上増加

他の指標・数値との関連性

資本金・資本剰余金との関連性

純資産増加率の主な要因が資本金や資本剰余金である場合、増資が行われた可能性があります。その場合、増資によって得た資金の使途について検討することが重要です。

下のグラフは、大林組の資本金および資本剰余金の推移を示しています。この10年間、ほとんど変化がないことから、資金調達によって純資産が増加したわけではなさそうです。

大林組資本金資本剰余金10年グラフ

利益剰余金との関連性

下のグラフは、大林組の利益剰余金の推移を示しています。毎期安定して増加しており、大林組が継続的に高い収益を上げていることが分かります。これにより、獲得した利益をもとに純資産を増加させていることが確認できます。

大林組利益剰余金10年グラフ

純資産の増減要因には、自己株式、その他包括利益累計額、新株予約権、非支配株主持分などが含まれます。これらの要素を考慮し、実情に即した分析を行ってください。

 

何に使われたか

純資産が増加すれば、資産も増加します。そのため、どの資産が増加したのかを確認することが重要です。

  • 借入金減少 … 業績が低迷している可能性がある。
  • 現金預金増加 … 今後の資金用途を確認する必要がある。
  • 有形固定資産増加 … 本業への投資を示す。
  • 無形固定資産増加 … M&Aを行っている可能性がある。
  • その他投資等増加
    • 連結財務諸表 … 投資有価証券・関連会社への投資。
    • 個別財務諸表 … 投資有価証券・子会社・関連会社への投資。

財務指標利用の注意点

自己株式を取得することで純資産が減少したり、増加が緩やかになる企業もあります。これは、資金に余裕があるために実施しているのか、それとも株価を引き上げる目的なのかを確認する必要があります。

まとめ

併せて読みたい

経常利益増加率・売上高増加率・総資本増加率・従業員増加率の4指標の関係を記載しています。

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山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
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