事務消耗品費とは

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目次

事務消耗品費とは

事務消耗品費とは、事務作業や業務を行うために使用される消耗品にかかる費用を指します。企業の日常運営に欠かせないものであり、短期間で消費されるものが該当します。

具体例

  • 文房具類(ペン、ノート、ファイル など)

  • コピー用紙

  • インクカートリッジ

  • カウンター料

  • 名札

  • 電池

財務諸表分析手法 事務消耗品費

事務消耗品費のコスト増加(岡三証券グループの例)

下記のグラフは、岡三証券グループにおける事務消耗品費の初年度比を示したものです。売上高の初年度比と比較することで、事務消耗品費のコストが増加していることがわかります。

岡三グループ 事務消耗品費初年度比
計算式
初年度比=当該年度÷初年度×100(単位:%)
※初年度は異常値でないことを前提に、任意で設定されます。

事務消耗品費の開示場所

販管費の内訳項目は表示場所が複雑

いざ、「事務消耗品費について自分で分析しよう!」と思ったときに気を付ける必要があるのが、開示の有無です。

前提として、事務消耗品費は「販売費および一般管理費」の1項目です。

このような販管費の内訳項目は、開示の有無や開示場所が複雑ですので、解説していきたいと思います。

分析する企業によっては、そもそも非開示で分析できない場合もありますので注意が必要です

事務用品費がPL本表に載っているケース

非上場企業の一般の決算書で事務消耗品費は基本的に独立掲記されています。

有価証券報告書を提出する企業(上場企業等)では、事務消耗品費をPL本表で開示しているのは約1%(約60社・2024年)です。残りの約99%の企業ではPL本表には載っていません。そのような企業であっても、事務消耗品費が販売費及び一般管理費合計の概ね10%以上の場合などは注記としてPL本表の数ページ後に開示されています。

なお、企業力Benchmarkerでは、PL本表で開示されている事務消耗品費は値を取得していますが、注記のみで開示されている場合には値を取得していません。

以降の章では、有価証券報告書を提出する企業について会計基準ごとに解説します。

会計基準ごとの相違

日本基準を採用する企業の場合

事務消耗品費をPL本表で開示している約60社は、会計基準として「日本基準」を採用しています。ドメスティック産業を主軸とする企業などは、ステークホルダーにとって馴染みの深い日本基準で財務諸表を開示することが多いです。

ただし、日本基準を採用しているものの、事務消耗品費を含む販管費の内訳項目をPL本表で開示していない企業も多数あります。その場合は、注記を確認しましょう。

KeePer技研は、事務消耗品費を「事務用品費」としてPL本表に記載しており、ほぼ全ての勘定科目を積極的に開示しています。

Keeper技研販売費及び一般管理費 日本基準 個別PL
Keeper技研販売費及び一般管理費 日本基準 個別PL

米国会計基準を採用する企業の場合

次に、米国会計基準を採用する企業について説明します。前述のとおり、日本基準を採用する企業以外では、PL本表に事務消耗品費が開示されることはありません。

米国会計基準では、「販売費及び一般管理費」の総額のみがPL本表に記載されます。事務消耗品費の開示の有無については、各注記を確認する必要があります。

なお、別の論点になりますが、米国会計基準では、販売費及び一般管理費とは区別して、研究開発費が独立項目として開示されるケースも多く見られます。

富士フイルムホールディングス 営業利益まで 米国会計基準
富士フイルムホールディングス 連結PL 米国基準 

IFRSを採用する企業の場合

次に、IFRSを採用する企業について説明します。IFRS(国際会計基準)は、グローバルに展開する企業が採用する傾向にあります。世界的に認知されている会計基準であるため、海外の投資家や企業をステークホルダーに持つ場合、IFRSを採用するメリットがあります。

IFRSを採用する企業の財務諸表は、おおむね以下のような表記となっており、連結PL本表には事務消耗品費は記載されていません。そのため、詳細を確認するには、注記を参照する必要があります。

 

ワールド IFRS連結損益計算書 営業利益まで
ワールド 連結PL IFRS

まとめ

併せて読みたい

「初年度比」とは、初年度を100%とし、以降の年度での増減を示す財務指標です。売上高や経常利益などの推移を視覚化し、企業の成長や戦略を分析する際に有用です。

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山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
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