法定福利費とは

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目次

法定福利費とは

法定福利費とは、企業が法律に基づいて従業員に提供する福利厚生の費用で、主に社会保険料や労働保険料に関連するものです。
具体的には、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、労災保険料、児童手当拠出金、介護保険料(対象者のみ)の会社負担部分を指します

分析ナレッジ 法定福利費

従業員を雇えばその負担額は法定されて決まります。

法定福利費のコストダウンを図る動きもありますが、人手不足による採用難の中、従業員に選ばれる福利厚生を提供する必要があります。

法定されたコストであり、採用難の状況を考慮すると、このコストを分析して得られる知見は現時点ではありません。

法定福利費はどこに載っているか

販管費の内訳項目は表示場所が複雑

法定福利費」について自分で分析しようと思ったときに、注意すべき点は開示の有無です。

前提として、法定福利費は「販売費および一般管理費」の一項目です。

このような販管費の内訳項目は、開示の有無や開示場所が複雑であるため、解説いたします。

企業によっては、非開示のため分析できない場合もあり、注意が必要です。

給与がPL本表に載っているケース

一般的な決算書では、法定福利費は独立して記載されています。

有価証券報告書を提出する企業(上場企業等)では、法定福利費をPL本表で開示しているのは約5%(約230社、2024年)です。残りの約95%の企業では、PL本表には記載されていません。そのような企業であっても、給与が販売費および一般管理費合計の概ね10%以上の場合などは、注記としてPL本表の数ページ後に開示されています。

なお、企業力Benchmarkerでは、PL本表で開示されている給与の値は取得していますが、注記のみで開示されている場合には値を取得していません。

以降の章では、有価証券報告書を提出する企業について、会計基準ごとに解説します。

日本基準を採用する企業の場合

法定福利費をPL本表で開示する約230社は、会計基準として「日本基準」を採用しています。ドメスティック産業を主軸とする企業などは、ステークホルダーにも馴染みの深い日本基準で財務諸表を開示することが多いです。

ただ、日本基準を採用しているものの、法定福利費を含む販管費内訳項目をPL本表で開示していない企業もたくさんあります。その場合は注記を確認しましょう。

下記はライフコーポレーションの法定福利費開示をグラフ化しています。2016年が開示条件から外れたためデータは取得できていません。

ライフコーポレーション 法定福利費グラフ

米国会計基準を採用する企業の場合

次に、米国会計基準を採用する企業について説明します。前述のとおり、日本基準を採用する企業でしかPL本表に法定福利費の開示はありません。

米国会計基準では、PL本表には「販売費および一般管理費」の総額のみが記載されており、法定福利費の詳細については、各注記を確認する必要があります。

また、関連するポイントとして、米国会計基準では「販売費および一般管理費」とは別に、研究開発費が独立して記載されるケースが多く見られます。

富士フイルムホールディングス 営業利益まで 米国会計基準
富士フイルムホールディングス 連結PL 米国基準 

IFRSを採用する企業の場合

次に、IFRS(国際会計基準)を採用する企業について説明します。IFRSは、グローバルに展開する企業が採用する傾向があり、世界的に認知されている会計基準です。そのため、海外投資家や海外企業をステークホルダーに持つ場合、IFRSを採用することでメリットが得られます。

IFRSを採用する企業の財務諸表では、一般的に以下のような表記が用いられ、連結PL本表には法定福利費の記載がありません。そのため、詳細を確認するには注記を参照する必要があります。

ワールド IFRS連結損益計算書 営業利益まで
ワールド 連結PL IFRS

まとめ

併せて読みたい

給与は労働の対価であり、基本給や手当を含む。企業の損益計算書で開示され、会計基準により表示方法が異なる。

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山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
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