福利厚生費とは
福利厚生費とは、企業が従業員やその家族の生活を支援し、働きやすい環境を提供するために負担する費用です。
具体的には社宅や寮の費用、健康診断・人間ドック費用、レクレーションや社員旅行の費用、社内食堂やランチ補助などがあります。
福利厚生費は社員のパフォーマンスを向上させるために支出されますが、その内容は多岐にわたり、財務諸表分析から得られる知見は限定的です。企業自身が、保養施設を設けたことで離職率が低下したなど、非財務的な分析を行う方が効果的です。
財務諸表分析手法 福利厚生費
福利厚生費は社員のパフォーマンスを上げるために支出されますが、その内容は様々で財務諸表分析をして得られるナレッジは限定的です。会社自身が、会社保養施設を作ったら離職率が減ったとか、非会計の分析をすることの方が効果的です。
福利厚生費で従業員に手厚く 岡谷鋼機
以下のグラフは、岡谷鋼機の従業員数と福利厚生費の初年度比を示しています。従業員数の増加より福利厚生費の増加が上回っています。岡谷鋼機は従業員の福利厚生を重視してきています。岡谷鋼機では、離職率が低下した可能性があります。

福利厚生費の値はどこに載っているのか
販管費の内訳項目は表示場所が複雑
福利厚生費について自分で分析しよう」と考えたときに、注意すべき点は開示の有無です。
前提として、給与は「販売費および一般管理費」の一項目です。
このような販管費の内訳項目は、開示の有無や開示場所が複雑であるため、解説いたします。
企業によっては、非開示のため分析できない場合もあり、注意が必要です。
福利厚生費がPL本表に載っているケース
一般的な決算書では、福利厚生費は独立して記載されています。
有価証券報告書を提出する企業(上場企業等)では、福利厚生費をPL本表で開示しているのは約6%(約300社、2024年)です。残りの約94%の企業では、PL本表には記載されていません。そのような企業であっても、福利厚生費が販売費および一般管理費合計の概ね10%以上の場合などは、注記としてPL本表の数ページ後に開示されています。
なお、企業力Benchmarkerでは、PL本表で開示されている福利厚生費の値は取得していますが、注記のみで開示されている場合には値を取得していません。
以降の章では、有価証券報告書を提出する企業について会計基準ごとに解説します。
日本基準を採用する企業の場合
福利厚生費をPL本表で開示する約300社は、会計基準として「日本基準」を採用しています。ドメスティック産業を主軸とする企業などは、ステークホルダーにも馴染みの深い日本基準で財務諸表を開示することが多いです。
ただ、日本基準を採用しているものの、福利厚生費を含む販管費内訳項目をPL本表で開示していない企業もたくさんあります。その場合は注記を確認しましょう。
江崎グリコは福利厚生費をPL本表に掲記しています。

米国会計基準を採用する企業の場合
次に、米国会計基準を採用する企業についてです。前述のとおり、日本基準採用の企業でしかPL本表に福利厚生費の開示はありません。
米国会計基準では「販売費及び一般管理費」の値のみが本表に載っています。福利厚生費の開示の有無については、各注記を確認していく必要があります。
なお、別の論点となりますが、米国会計基準では販管費及び一般管理費の額とは区別して、研究開発費が独立掲記される場合も多いです。
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IFRSを採用する企業の場合
次に会計基準でIFRSを採用する企業についてです。IFRS(国際会計基準)は、グローバル展開する企業が採用する傾向にあります。世界的に認知されている会計基準ですので、海外投資家や海外の企業をステークホルダーに持つ場合は、IFRSを採用するメリットがあります。
IFRSを採用する企業はおおむね以下のような表記になり、連結PL本表には福利厚生費は表記されていません。注記を確認しに行く必要があります。
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まとめ
- 1 福利厚生費とは、企業が従業員やその家族の生活を支援し、働きやすい環境を提供するために負担する費用。
- 2 福利厚生費は自社で支出別・非会計データ分析が適する。
- 3 日本基準は(連結)損益計算書上福利厚生費が表記される場合もあるが、米国会計基準・IFRSでは表記されない。
法定福利費とは、企業が法律に基づき従業員に提供する福利厚生費用で、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、労災保険料、児童手当拠出金、介護保険料(対象者のみ)の会社負担分を指します。