かつての王者カシオに何が足りないのか──財務から見る構造変化の兆し

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かつて世界を魅了した「G-SHOCK」。その輝きを放ったカシオが、今や株式市場で苦戦を強いられています。時計事業への依存と、海外売上の高さという構造が、政治リスクや為替変動に対する脆さとして浮かび上がっています。 一方、競合であるセイコーグループとシチズンは変革を加速中。セイコーGは自治体・企業向けにDX事業を拡大し、時計を超えた存在感を確立。シチズンも、ものづくり現場を支える工作機械事業を新たな収益の柱に育てています。 カシオも構造改革を進め、時計以外の事業に挑戦しています。注目されたのが感情表現が可能なペットロボット「Moflin」。期待以上の反響はあったものの、まだ本格的な収益貢献には至っていません。 ここで財務データから3社を比較してみましょう(過去10期分のデータに基づく): 売上高総利益率:これは成長の先行指標となります。かつて優位だったカシオに、セイコーGとシチズンが追いついてきています。競争力の差が縮まってきている証拠です。 有形固定資産:これは本業への投資動向を表します。セイコーGは2020年以降、シチズンも2023年以降増加傾向にあるのに対し、カシオは横ばい。本業での投資を見いだせていない可能性があります。 固定比率:これは財務の健全性を測る指標ですが、ここではシチズンに注目です。固定比率が改善していないということは、純資産の増加と同じペースで投資を進めているということ。つまり、成長投資を重視しているのです。 まとめると―― カシオは、売上高総利益率で競争力を失いつつあり、有形固定資産の推移からも新たな投資先を模索中の様子。対してセイコーG・シチズンは「稼げる何か」を見つけ、投資を始めています。シチズンは財務体質の改善よりも投資を優先しています。これらは企業の成長を定量的に定義した企業力総合評価に表れています。 とはいえ、カシオにはまだ十分な投資余力があります。だからこそ、今後の一手に注目です。 #カシオの現在地 #GSHOCKの次 #セイコーの変革 #シチズンの投資戦略 #財務分析 #企業比較 #成長戦略

250620カシオ・セイコーG・シチズン企業力総合評価・売上高総利益率・有形固定資産・固定比率
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山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
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