野村不動産が総額4000億円を投じる「ブルーフロント芝浦」プロジェクトが、いよいよ9月に始動します。高さ230メートルのS棟には、グループ8社が本社を新宿から移転。スカイラウンジやサウナなどを備えた共用施設も整備され、すでにオフィスの9割が契約済みという滑り出し。これは、同社が「まちづくり」へ本格参入する象徴的な試みでもあります。 しかし一方で、中野サンプラザや津田沼の再開発は頓挫し、企業の信用には陰りが生じています。建設費の高騰、人手不足という逆風の中、「都市を創る」という決意が本物かどうか、その覚悟が問われているのです。芝浦の再開発は単なる事業ではなく、失われた信頼を取り戻し、未来を切り拓く戦略の要。果たしてこのプロジェクトが、野村不動産を真の総合デベロッパーへと導く転機となるのでしょうか。今、その視線は芝浦に注がれています。 財務の視点で野村不動産を読み解くと、企業力総合評価は安定しているものの、WARNINGが3つ付いています。理由は資産効率と棚卸資産回転期間にあります。野村不動産の棚卸資産回転期間(オレンジ)は2015年で9.08ヵ月とかなり長く、それ以降悪化し続け2024年には16.51ヵ月、金額にして1,011,139百万円に達しました。売上高が734,715百万円ですから、今ある棚卸資産を売るだけで16.51ヵ月分以上の売上高があるということです。「以上」と記したのは、棚卸資産が原価で計上されているため、販売すればさらに高い額になるという前提に基づいています。 流動資産内訳を見ると、現金預金(青)や売上債権・有価証券(オレンジ)はほとんど増えていないのに対し、棚卸資産・その他流動資産(グレイ)の膨張が顕著です。良く管理された会社では、売上高の変化に合わせて流動資産合計が変動し、その割合は安定しているものです。 BSバランスからは固定負債(ピンク)が増加していることがわかり、棚卸資産の資金繰りが長期有利子負債に依存している実態が浮き彫りになります。 実は、不動産ディベロッパーはどの会社も棚卸資産回転期間を延ばしています(過去記事を書いたのでコメント欄に貼り付けておきます)。これは開発競争の過熱を示すものであり、ここに不動産不況といったインシデントが加われば、業界全体が膨大な在庫を抱えるリスクを負うことになります。信頼回復のために新たな開発に着手するのと同時に、棚卸資産を減らすという地道な活動こそが、今求められているのではないでしょうか。 #野村不動産 #ブルーフロント芝浦 #棚卸資産 #都市開発 #財務分析 #まちづくり #総合デベロッパー
