マネーフォワードはなぜ“稼がなくても評価される”のか

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マネーフォワード株式会社は、2012年に創業された日本のフィンテック企業です。個人向けには家計簿アプリ「マネーフォワード ME」を展開し、銀行やクレジットカード、証券口座、ポイントなどを自動連携。“お金の見える化”という新しい生活習慣を1,000万人以上のユーザーに届けてきました。法人向けには「マネーフォワード クラウド」を通じて、会計・請求・経費・給与・勤怠といった業務をクラウドで効率化。中小企業やスタートアップにとって、信頼できるインフラとして確固たる地位を築いています。 株主からは、SaaSモデルによる安定収益と高成長性が評価されており、M&Aによる事業拡張も戦略的です。買収先企業からは文化を尊重する統合スタイルが好感を得ており、従業員からも柔軟な働き方やチャレンジを歓迎する風土に満足の声が上がっています。金融機関や証券会社とのAPI連携も幅広く、パートナーからは「金融とテクノロジーの橋渡し役」として期待されています。顧客の声も「家計が整った」「確定申告が楽になった」とポジティブで、UI/UX設計も広い層に支持されています。 しかし、企業の実態を財務指標から見ると、異なる側面が見えてきます。企業力総合評価では、過去8年間「成長」とは反対の動きをしており、営業効率は赤色ゾーンの底値を這っています。営業効率財務指標数値グラフ上では強烈な増収(青)と高い売上総利益率(オレンジ)が目立つ一方、売上高販管費比率(黄)が高く、営業損失が常態化。PLボックスの赤色が、この状況を一目で示しています。 にもかかわらず、純資産は増加を続けています(BSバランス緑)。本来、営業赤字なら当期純損失によって純資産は減少するはずですが、それが増えるのは増資によって株主が資金を補充しているためです。つまり、会社が稼がなくても、株主がお金を入れてくれる構造が続いているということです。銀行融資もあり2024年11月期の現金預金は452億円。この潤沢な資金調達力を背景に、積極的なM&Aで売上を伸ばしています。また、従業員数(生産効率財務指標数値・青)も急増しており、人的資本を拡大しながらスケールアップを図っていることが見て取れます。 私は企業を「数字」で読む専門家です。理想として掲げられる“個人と企業のお金の課題をテクノロジーで解決する”というビジョンも素晴らしいとは思いますが、まずは自社の課題を会計リテラシーで見直すことの方が急務ではないかと感じます。数字の認識が変われば、企業の未来は意外なほどあっさりと好転するかもしれません。その“変化の瞬間”がいつ訪れるのか──とても興味深く見守っています。#マネーフォワード #フィンテックの真実 #クラウド会計の裏側 #財務で読む企業 #SaaSの現実 #M&Aの裏戦略 #スタートアップの現在地

250606マネーフォワード企業力総合評価・営業効率・生産効率・PLボックス・BSバランス
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山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
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