賞与とは
賞与は、企業が従業員に対して支給する一時的な報酬のことです。給与とは別に、業績や個人の成果に応じて支払われます。
賞与は、従業員のモチベーション向上や業績向上のインセンティブとしての役割を持ち、企業と従業員の双方にとって重要な報酬制度の一部です。
賞与 分析事例
ナカバヤシ
業績悪化を賞与で調整
下記グラフはナカバヤシの給与・賞与の初年度比(2015年初年度)です。「役員報酬とは」で述べたように、ナカバヤシは業績が悪化しています。グラフを見ると給与総額は安定した増加トレンドですが、賞与は減っています。人件費のコスト削減は賞与でしています。賞与の減額は業績の悪化を意味しますが、将来的には士気低下のリスクがあります。
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大和ハウス工業
業績改善をまず賞与で報いる
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賞与の値はどこに載っているのか
販管費の内訳項目は表示場所が複雑
いざ、「賞与について自分で分析しよう!」と思ったときに気を付ける必要があるのが、開示の有無です。
前提として、賞与は「販売費および一般管理費」の1項目です。
このような販管費の内訳項目は、開示の有無や開示場所が複雑ですので、解説していきたいと思います。
分析する企業によっては、そもそも非開示で分析できない場合もありますので注意が必要です。
企業力Benchmarkerでは賞与引当金繰入額等、賞与支給額を示す場合は賞与として処理しています。
賞与がPL本表に載っているケース
非上場企業の一般的な決算書では、賞与は基本的に独立して記載されています。
有価証券報告書を提出する企業(上場企業等)では、賞与をPL本表で開示しているのは約16%(約800社、2024年)です。残りの約84%の企業ではPL本表には載っていません。そのような企業であっても、賞与が販売費及び一般管理費合計の概ね10%以上の場合などは、注記としてPL本表の数ページ後に開示されています。
なお、企業力Benchmarkerでは、PL本表で開示されている賞与の値は取得していますが、注記のみで開示されている場合には値を取得していません。
以降の章では、有価証券報告書を提出する企業について会計基準ごとに解説します。
日本基準を採用する企業の場合
賞与をPL本表で開示する約800社は、会計基準として「日本基準」を採用しています。ドメスティック産業を主軸とする企業などは、ステークホルダーにも馴染みの深い日本基準で財務諸表を開示することが多いです。
ただ、日本基準を採用しているものの、賞与を含む販管費内訳項目をPL本表で開示していない企業もたくさんあります。その場合は注記を確認しましょう。
以下は大和ハウス工業のPL本表、販売費及び一般管理費の開示です。「賞与」はありませんが「賞与引当金繰入額」はあります。企業力Benchmarkerではこれを「賞与」としています。

米国会計基準を採用する企業の場合
次に、米国会計基準を採用する企業についてです。前述のとおり、日本基準を採用する企業でしかPL本表に賞与の開示はありません。
米国会計基準では「販売費及び一般管理費」の値のみが本表に載っています。賞与の開示の有無については、各注記を確認していく必要があります。
なお、別の論点となりますが、米国会計基準では販管費及び一般管理費の額とは区別して、研究開発費が独立掲記される場合も多いです。
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IFRSを採用する企業の場合
次に、会計基準でIFRSを採用する企業についてです。IFRS(国際会計基準)は、グローバル展開する企業が採用する傾向にあります。世界的に認知されている会計基準ですので、海外投資家や海外の企業をステークホルダーに持つ場合は、IFRSを採用するメリットがあります。
IFRSを採用する企業はおおむね以下のような表記になり、連結PL本表には賞与は表記されていません。注記を確認しに行く必要があります。
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まとめ
- 1 業績の悪い会社は給与より賞与が減額される。
- 2 業績の良い会社は賞与が先に増やされる。
- 3 日本基準は(連結)損益計算書上賞与が表記される場合もあるが、米国会計基準・IFRSでは表記されない。
- 4企業力Benchmarkerでは、賞与引当金繰入額など賞与と同等のものは賞与として集計している。
給与と従業員数の関係・給与と役員報酬の関係などを考察しています。