今回は、「青汁より緑汁」と衝撃のキャッチコピーの健康食品会社 株式会社ユーグレナを分析してみました。同社社長出雲充氏は東京大学在学中にバングラディッシュを訪れ、「世界の食料問題を解決したい。」と感じたという。それが原点となり、ミドリムシ(学名:ユーグレナ)に出会い、その高い栄養素や二酸化炭素固定化能力の優れた問題解決能力に可能性を認め、起業しました。
2012年9月までの5年間を分析しています。
企業力総合評価は、111.19→112.23→177.67→176.60→176.55と推移しています。2010年、66.44ポイント増と急成長しました。
営業効率(儲かるか)、資本効率(資本の利用度)は2009年までは底値でしたが、2010年、突然天井値になりました。営業が破綻している状況から突如、絶好調です。見事ですね。
生産効率(人の利用度)は、赤信号領域から急改善しています。
資産効率(資産の利用度)は青信号領域です。
流動性(短期資金繰り)は、非常に良く、5期連続天井値です。
安全性(長期資金繰り)も天井値です。上場前から他人資本を利用していますから、高い値です。
営業効率を見てみましょう。
4期連続の増収増益(当期利益ベースを除く)です。増収割合も非常に大きく倍々ゲームです。
売上総利益率は5年間を通じて50%超を維持し、会社が比較的小さい時期からも、高い付加価値を維持しながら販売していたことが分かります。売上高総利益率とは、販売価格から製品原価を差し引いた利益の割合です。これは、儲かるか否かの最も重要な財務指標です。この指標が高ければ、販売費及び一般管理費、支払利息等がかかっても十分利益が残ります。もっと言えば、販売費等にお金をかけることができるので、新規販売先を開拓し、管理費にお金をかけて、不効率を無くすシステムを構築したりできる訳です。
貴方の会社の売上総利益率は何%ですか? 直ぐに出てこないとしたら、大問題です。その数値をいかにしたら上げられるかを必死で考えていますか? 売上高をいかに上げるかばかりを考える誤謬を犯す会社が多くあります。売上が上がり、売上総利益率が下がれば、場合によっては「利益なき繁忙」が待っています。
どの財務指標を大切にするかが分かれ道なのです。
ユーグレナが、ユーグレナをどのように成長させるか、明言されていますから紹介しましょう。
ユーグレナ社では、ミドリムシを利用した事業を最終的に5つの分野へ展開していく戦略を描いています。これはバイオマスの5Fの考えに則って、価格が高い順からFood(食料)、Fiber(繊維)、Feed(飼料)、Fertilizer(肥料)、Fuel(燃料)の各分野へ展開することを目的に、ミドリムシを生産していくものです。そして培養技術の更なる向上・開発によって、原料の低コスト化を図り、価格が高いものから低いものへと展開していくシステムの構築を試みています。 現在はバイオマスの5Fの内、一番価格が高いFood(食料)を切り口として、機能性食品及び化粧品を事業化しておりますが、今後は、Feed(飼料)及びFuel(燃料)等の事業化を目指していきます。また、ユーグレナ特有の成分であるパラミロンは、水・油に対する不溶性を有する一方で吸水性・吸油性を持つ特殊な素材のため、洗顔剤やフィルム等への応用も考えられます。 ユーグレナ社は、パラミロンのもつこの性質を活かし、将来的には化粧品以外にも様々な工業製品への利用可能性を追求していきます。 |
個別の販売戦略はどうでしょうか。
下記は、ユーグレナの売上に占める割合の多い得意先です。
売上に占める割合が10%超のところしか開示されませんが、2社に対する売上割合が47.2%あり、同業の健康食品販売業を顧客とし、大口先を獲得しています。当然、このような得意先は沢山買ってくれますし、出荷ロットも多いので販売コストも少なくて済みます。このような先を増やしていくことでしょう。
ユーグレナの本社は、東京大学本郷キャンパス内にあります。
十分な利益率を確保し、試験研究費をふんだんに使い、東京大学ブランドまで効果的に利用しています。きっと、ユーグレナから仕入れて健康食品を売っている会社も、ユーグレナの信用を自社商品に転嫁しているのでしょう。
まとめ
ユーグレナの素晴らしいところは、その商品の素晴らしさ以外に、考え抜かれたビジネスモデルにあります。良い経営にとって何が必要か、どの順番で必要かなど、きちんと組んであります。それを効果的にアピールして協力者を得て伸びています。
2008年には164,355千円の売上にすぎなかったユーグレナの成長は、私達に沢山のことを教えてくれます。
SPLENDID21NEWS第96号【2013年11月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。