日本電産株式会社は、精密小型モータ、車載用製品、家電・商業・産業用製品、機器装置、電子・光学部品等の製造・販売を主な事業内容とします。事業内容はあまり知らないけれど、永守重信氏は知っているという方も多いのではないでしょうか。
経営を俯瞰する 日本電産
2012~2021年3月期までの10年間の連結財務諸表を分析しました。
企業力総合評価は2013~2014年悪化と改善の後、ジワリとした悪化トレンドを示しています。これくらいの悪化は、日本電産㈱自身も認識できません。定量分析はそのまま答えを返しますし、これを経営者が問題視すると優良企業化します。
営業効率はほぼ天井値ですが、剥がれ落ち、生産効率は赤信号領域ですが、毎期見事な改善です。
資産効率は赤信号領域に沈み浮き上がってきません。
流動性・安全性の財務体質を示す指標は青信号領域です。
M&Aしても人は増えず生産効率改善 日本電産
毎期M&Aを実践して子会社がどんどん増えていますが、従業員数は余り増えません。先ほど見た生産効率の改善はM&Aをして増収(7000億円から1兆6000億円)になるも従業員数があまり増えないので生産効率が上がっているのです。1人当たり売上高の増加を見れば、納得なさることでしょう。
永守氏のM&Aは、業績の悪い会社を買収してリストラなく立て直すことで有名です。それに矛盾するような結果です。確かにM&A時のリストラはされないのかもしれませんが、自主的にやめていく従業員も多いのかもしれません。仕事が相当できないといられない会社なのでしょう。
資産効率は意外に見ていない 日本電産
これに対し、資産効率は改善してきません。M&Aで子会社化すると子会社の持っていた資産・負債を引き継ぎます。「資産-負債」の金額より高く買うと「のれん」(無形固定資産)も発生し更に資産が増えます。日本電産㈱の「のれん」の10年間推移を調べると、増加していますが、それほど多くはありません。割高なM&Aをするほど甘い会社ではないのです。それでも売上高より資産が増加し、資産効率は改善させることができません。
モノより人の効率化がお得意 日本電産
生産効率は人の効率、資産効率はモノの効率で、どちらも有効活用をしなければならないことです。但し、「人は前月給与払ったから今月働いて」、はありえませんので時間の制約が厳しいのに対し、資産は買ってしまえば消えてなくなるわけではないので、モノが存在する限り、後で生かすことができます。日本電産㈱は、扱いの難しい生産効率改善の方がお得意なのです。
じげんとの比較 日本電産
日本電産㈱ほど目利きが及ばない株式会社じげんと比べると差は歴然です。
じげん㈱の記事は先月発行いたしましたので合わせてご覧ください。(こちらから)
資産は未来の費用のカタマリです。ですから資産の活用に拘る必要があります。
まとめ
日本電産㈱は1兆6000億円をこえる巨大企業になりました。それを支えたのは厳しい経営者、永守氏の存在があります。経営手法は承継できるのか、できないとすれば、どのような路線なのか気になるところです。
編集後記 永守氏の買収をしてもリストラしないという話を聞いていましたので、従業員数が増えないのは意外でした。自社の経営の参考にする場合、定性情報だけを信じるのは危険です。必ず定量情報確認しなければなりません。(#^.^#) 文責JY 〒541-0052 大阪市中央区安土町1-6-19 プロパレス安土町ビル7階D号 株式会社 SPLENDID21 tel 06-6264-4626 ✉ info@sp-21.co.jp https://sp-21.com |
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