今回は、世界に誇る日本の編み機メーカー株式会社島精機製作所の2013年までを分析してみました。島精機製作所は、現社長島正博氏が、昭和36年、和歌山市に資本金100万円で三伸精機株式会社を設立し、手袋編機用半自動装置の製造販売を開始したことに始まります。島社長は昭和12年3月生まれの76歳、もう52年も社長を務めておられます。
企業力総合評価は、165.09→141.07→161.82→137.44→163.20と推移しています。かなりハイレベルで乱高下をしています。その原因は、営業効率、資本効率の動きの影響が強いようです。また、弱い悪化トレンドは生産効率が影響を与えています。
営業効率(儲かるか)は青・赤・青・赤・青と目まぐるしく悪化・改善を示しています。赤信号領域は、この利益率では不合格を示します。翌期は青信号領域に絶対戻らなければなりませんから、この反発力は評価できます。しかし、ちょっと気になります。
資本効率(資本の利用度)も、ほぼ同じ動きをしています。投下資本に対する利益額の指標です。
生産効率(人の利用度)は悪化トレンドです。これは減収(売上の減少)、減益(利益の減少)とは無関係に従業員数を決めている為です。売上高が38,970百万円から34,970百万円に減少したのに、従業員数が1707人から1736人に増えています。その為1人当り売上高が28,670千円から20,144千円に悪化しています。超優良企業で高い技術を蓄えてきた島精機製作所にとって、経営の失調時の人事対応は想定外だったのでしょうか。上場企業で1人当り売上高指標に無頓着な会社はありません。一部上場企業では、1人当り売上高の変動が毎期プラスマイナス3%という会社もあるくらいです。
資産効率(資産の利用度)は、底値です。投資を活発にしているので、資産効率に影響を与える総資本回転期間が38か月と圧倒的に長い為です。通常の財務分析では、総資本回転期間が12か月以上は否との評価をされるようですが、SPLENDID21の資産効率は、営業効率が天井値であれば、積極投資の断行と評価します。ここ5年は営業効率は乱高下していますから、投資の不調と言えます。
流動性(短期資金繰り)は天井値です。短期債務に対する支払原資は十分にあります。
安全性(長期資金繰り)も天井値です。自己資本比率は83.99%です。つまり負債は16.01%です。固定比率は77.29%ですから、固定資産は全て自己資本(純資産)で賄われており、立派な数字と言えます。
過去の蓄積である、つまり財務体質(流動性・安全性)の良好さと、最近の利益率の悪化という組み合わせから、島精機製作所は、長年世界のトップを独走してこられたカリスマ社長の失調といえるかもしれません。
営業効率の各下位指標を見てみましょう。
4年間で売上が14,000百万円・28.59%減収です。減った売上総利益が12,440百万円ですので、売上減少額の88.86%の売上総利益が失われています。びっくりしますね。
2013年は営業損失が出ています。SPLENDID21NEWSを良く読まれている方は答えが出ますね。来期は絶対営業利益を出さなければなりません。
前半で説明した、島精機製作所の強みである財務体質(流動性・安全性)はどう作用したのでしょうか。売上高経常利益率・売上高当期利益率は2.09%・1.41%と改善しています。財務で挽回しています。過去に、どんどん利益を上げ、法人税を払い、利益剰余金を積み上げてきたご褒美がここに表れています。業績が厳しい時、過去の自分が助けてくれるのです。不況が来たらすぐに資金繰りが厳しくなる会社は、過去の同社のような努力が足りなかったのです。資金繰り悪化の原因は、「不況が来たから」「銀行が貸してくれないから」ではありません。
素晴らしい製品を生産してきた証明は売上高総利益率を見ると分かります。2009年には50.34%でした。15.42%も悪化したとはいえ、34.92%あるわけです。もともと低い会社であったらこの悪化に耐えられなかった筈です。
生産効率の各下位指標を見てみましょう。
1人当り売上高は29.74%減少しています。強烈な減収時に従業員数が増えるからです。このような経営状況の中ではあまり考えられない推移です。
2013年1人当り経常利益は2,402千円あります。ここにも高い技術で(下落したとはいえ)高い売上高総利益率が効いています。これも技術の研鑽という、過去からのたゆまぬ努力の賜物です。
まとめ
島精機製作所は、ターニングポイントを迎えています。しかし、過去の努力が今を助けています。
注視していきたい日本の宝物会社です。
SPLENDID21NEWS第97号【2013年12月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。