日々動く経済の中で最善の経営の舵取りをしていくためには、自社の状況の全体像をしっかり把握しておかねばなりません。しかし、「売上があがり、利益率は下がり、キャッシュは増え、社債の償還があり、従業員数が増え・・」といったあらゆる数字の増減が並び、さらに人材や技術の蓄積や顧客との関係といった定性的要因がからむとき、
「じゃあ結局うちは全体として、よくなっているのか、悪くなっているのか」
と、よほどの経営者の方でも迷ってしまうのではないでしょうか。実際のところ、売上や利益の推移を元に、あとは「勘と経験」で決断されている場合が多く、「何かを捉えそこなっている気がする」と心中もやもやしたものを抱えている経営者の方が多いようにお見受けしております。
「SPLENDID21経営分析」を使えば、過去5期の財務諸表と従業員数の推移を入力するだけで、御社の過去の歩み、現在の問題点など、経営者の「暗黙知の中でもやもやとしている認識」が、ビジュアルなグラフに一目瞭然となります。これは過去の企業データからの統計処理で生まれたアルゴリズムであり、経営者の「直感力と経験」に「客観力」を付加するその分析結果には「圧倒的な事実の重み」があります。
「SPLENDID21経営分析」の最も多い利用のされ方は、自社あるいはベンチマークとされている競合他社をSPLENDID21で分析することです。
同一分析であらゆる規模・業種の企業を分析できるため、先人の成功・失敗の事例が豊富に蓄積されており、それらの「歴史」との比較により、ただの財務的な分析結果にとどまらない「企業が今抱えている問題」についての深い洞察を得ることが出来ます。
たとえば、フードビジネスであれば、以下の企業と自社との比較分析ができます。
また、未公開の企業であっても、優良企業は、ホームページで自社の決算書を公開していますので分析可能です。
さて、今回は、株式会社吉野家ディーアンドシーの分析を見てみましょう。
株式会社吉野家ディーアンドシーは、原料牛肉のほとんどがアメリカ合衆国からの輸入であるため、2003年にワシントン州でBSE感染牛が確認され米国からの輸入が停止されると牛肉の調達が不能になり、牛丼販売の停止に追い込まれ、営業の縮小や、牛カレー丼、豚丼などの代替商品の緊急投入を余儀なくされています。
株式会社吉野家ディーアンドシーの総合評価は、2003年まで170超であり、優良企業であったことがわかります。2005年の自己資本比率は84%であり、また現金預金比率は385%ですから、営業効率が総合評価を下落させていることと理解できます。
売上高は減少していますが、売上高ほど従業員は減らしていません。経営に余力があるからでしょう。
悪化成り行き倍率は2年(○上表)となっています。
まとめ
BSEという牛丼屋にとって最大の危機において、吉野家が持ちこたえている理由を考えた時、経営の良い時もコツコツ財務体質を良くしていく生真面目さが重要ではないでしょうか。勝ってかぶとの緒を締めていますか。
SPLENDID21NEWS第8号【2006年7月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。
sp21 news008吉野家ディーアンドシー0607