今回は、自動車メーカー利益世界1位、経営の「見える化」の元祖、トヨタ自動車株式会社を分析してみましょう。
トヨタ自動車株式会社は、カイゼン(改善)、カンバン方式など、トヨタ生産方式等の生産・経営のノウハウを確立しました。また、販売を重視し銀行融資に頼らず自己資本の充実に努め、実質無借金経営・優良企業の代表的企業とされていますが、実際には自動車産業という巨額の設備投資や自動車ローンなど付随する事業に必要な膨大な資金調達の為、同業で実質無借金を標榜する日産自動車と同様に有利子負債は約10兆円を上まわります。
日産自動車の総合評価と比較して見ると、日産自動車の猛追撃がよく判ると同時に、両企業とも有利子負債の負担が多額であるために、総合評価は青信号領域の中段を推移していることが判ります。
結果として、トヨタ自動車株式会社も、自己資本比率はずば抜けた数値とは言えません。
一方で、スイスの国家予算に匹敵する金額(6兆円)があるといわれる多大な内部留保を抱えるため、トヨタ銀行とも称されています。
2002年3月期の通期決算において日本企業初の連結経常利益1兆円を超え、さらに2004年3月期の通期決算では、連結純利益(米国会計基準)でも日本企業初の1兆円超えを達成しました。(○)
1990年代以後の不況期にはその経営姿勢が注目され、ついにはトヨタ自身も生産方式を他企業にパッケージ販売するに至りました。以上のように、広く絶賛される経営手法でありますが、期間工や納入業者に対する搾取・圧迫の苛烈さから社会的に貢献しない企業であるという批判もあります。しかし、2006年1月からトヨタ社内に「社会貢献推進部」を設置し、交通安全や中国での植林活動、人材育成、自動車のリサイクルなどの環境への貢献などの社会貢献活動を積極的に行ったりもしています。
まとめ
トヨタの分析の説明をすると、多くの方が総合評価の低さに驚かれます。巨額の設備投資や、付随事業の資金調達の為に総合評価は低くなってしまうからです。トヨタは巷でトヨタ銀行、当期利益1兆円などの評価があることがこのようなギャップを生んでいるのでしょう。
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