企業分析ナレッジ

三陽商会 バーバリー契約切れの対応

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稼ぎ頭バーバリーの契約が2015年6月末に切れた株式会社三陽商会を取り上げます。三陽商会は1942年12月創業の78年目の老舗です。過去レインコートで成長の機会を掴みました。

10年企業分析 総覧 三陽商会

2009~2018年12月期までの10年間の連結財務諸表を分析しました。

企業力総合評価は79.72P(2009) →111.58 →107.16 →129.09 →146.53→159.29 →160.13 →106.64 (2016)→108.53 →113.18と推移しています。2016年は前年から53.49P下落し、同じトレンドで悪化すればあと1年で破綻懸念ラインまで到達するほど企業力を下げました。その後、2015年レベルへ戻せないままです。改善を阻むのは下位の各親指標の形状を見ればわかります。営業効率・資本効率の儲けを示す親指標が回復しないのが最大の原因です。流動性・安全性の財務体質を示す親指標はバーバリー契約切れ以前から上げてきており、前もってきっちり準備する優秀なCFOがいるのでしょう。

生産効率 従業員減少 三陽商会

この会社の特徴は生産効率にあります。てか、老舗アパレル他社は、三陽商会と同じく、生産効率は赤信号領域か青信号領域であっても赤青ゼロ判別ラインに近いことが多くあります。ファストファッションではないのだから、人手を十分にかけ、きちんと作り高く買っていただくという商売であり、また、長い業歴の中でじわじわと増加した人員を生かし切れていないのでしょう。生産効率が悪くても営業効率が良ければ何とかなるのですがそうなっていません。


生産効率のじわじわした改善は従業員数の減少です。バーバリー契約切れの時期は前もって分かっていたのでその対応なのかもしれませんが、これでは、従業員は会社に長くいられるとは思わなくなります。従業員減少下で営業効率が上がらない会社は従業員の士気が下がってしまいます。

営業効率 売上高利益率と販売費及び一般管理費推移 三陽商会

営業効率の各下位指標を見てみてみましょう。

SPLENDID21の熱心な読者の皆さんは強烈な減収の中、売上高総利益率を改善させたところを評価されたと思います。でも、営業効率は2017年2018年浮上してきません。
販売費及び一般管理費負担が減らず、売上高営業利益率が回復しない為です。販売費及び一般管理費の各勘定科目の2009年度比をグラフで示します。赤の折れ線グラフが売上高です。これより低いのは売上原価のみで、全ての販売費及び一般管理費は高いという結果です。
特に高いのは賃借料(2018年29億円)、減価償却費(5億円)、その他の販売費及び一般管理費(119億円)です。人件費関係は従業員数を減らしていることが効いているようです。
強烈な減収下でのリストラといえば「人を減らす」というイメージですが、資産のリストラの発想が希薄な会社は多くあります。普通の人にとって資産は財産ですが、企業にとって資産の出口は現金になるか(未来)コストになるかの2択となり、必ずしも財産ではありません。売掛金のように、現金が出口の資産はよいのですが、有形固定資産のように減価償却費となって費用が出口になる資産は、それが収益に貢献しなければ、未来の利益を食うばかりの厄介者となります。ソニーの分析を参照して下さい(SPLENDID21NEWS第135号)。

まとめ 三陽商会

収益の柱を何本も用意するべきでしょうが、達成できなかった時はダウンサイジングを上手にする必要があります。日本に長寿企業が多いのは、その選択を上手にこなしてきたのでしょう。

編集後記 若返りたいので、若者言葉を入れました・・・気が付いた?  (^^♪文責JY
〒541-0052 大阪市中央区安土町1-6-19 プロパレス安土町ビル7階D号 株式会社 SPLENDID21
tel 06-6264-4626  info@sp-21.co.jp     https://sp-21.com

SPLENDID21NEWS第161号【2019年5月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。

news162三陽商会

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Picture of 企業評価・経営者評価のスペシャリスト 山本純子
企業評価・経営者評価のスペシャリスト 山本純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
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株式会社SPLENDID21 代表取締役。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
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