企業分析ナレッジ

売りM&Aの成長戦略 ノーリツ鋼機

Facebook
X
Email
Print
目次

ノーリツ鋼機株式会社は、音響機器の開発・販売、ペン先部材の製造・販売する1951年創業の老舗企業です。最近ではM&Aを活発にする会社としても有名です。

経営全体を俯瞰する ノーリツ鋼機

2013年3月~2021年12月期までの10年間の連結財務諸表を分析しました。2020年3月の次は2020年12月決算。2016年3月からIFRS適用。

企業力総合評価は青信号領域ですが、ジワリと悪化トレンドです。

営業効率・資本効率の変動が激しく、その影響が企業力総合評価を乱高下させています。生産効率は安定した改善トレンドですが、資産効率は底値です。財務体質の流動性・安全性は悪化トレンドです。

売りのM&A戦略 ノーリツ鋼機

営業効率の各下位指標を見てみましょう。

2012は2020年12月決算のことで、売上高が極端に少ないのは9ヵ月で決算している上、売りのM&Aが多かった為です。売上高総利益率の改善と売上高販管比率の改善で、売上高営業利益率が急改善しました。
「(M&A)売りの成長戦略」です。

資産効率が営業効率に与える影響 ノーリツ鋼機

資産効率、流動性、安全性を、BSバランスの推移を使ってまとめて見てみましょう。固定資産を「のれん」と「のれん以外の固定資産」に分けています。流動性は流動資産と流動負債の割合の推移、安全性は資産総額に占める純資産の割合の推移を見れば悪化が読み取れます。

総資産は2012(2020年12月決算)で急激に増加し、資産効率が底値に張り付いてしまいました。この期は子会社の売却も行っていますがAlphaTheta株式会社を2020年4月に子会社化しており、結果として総資産が増加しています。2021年12月決算では、総資産のれん率(のれん÷総資産)は25%、営業利益のれん率(のれん÷営業利益)も6.2年とかなり重くなっています。2016年3月決算からIFRS適用でのれんの償却はなされませんので、償却される会計処理をとれば営業効率は悪くなります。またのれんは償却されないとはいえ、減損損失として費用化し、そもそものれんとせず、顧客との関係、技術資産としてその他の無形固定資産計上されたものは償却されますので、それらはM&Aコストとなり、営業効率を悪化させます。

生産効率を起点にした善循環、資産効率を起点にした悪循環 ノーリツ鋼機

ノーリツ鋼機㈱は、企業成長の善循環の起点は生産効率にあり、営業効率に良い循環を送り出しますが、資産効率が悪循環の起点として営業効率に悪い循環を送り出し、営業効率で鬩ぎあい、負けます。資産効率の悪化は安全性に悪循環を送り出します。Zoom解説会で図を説明しますのでご参加ください。

まとめ

ノーリツ鋼機㈱は、買収ばかりでなく、子会社売却を厭いません。202012月決算では、子会社売却等により営業効率が改善したものの財務体質悪化などの問題も抱えています。

編集後記 駐車場のアスファルトの割れ目に今年もムスカリが咲きました。可憐な花ですが、過酷な環境でも必ず花を咲かせます。幸せな気分になります。
(^^♪文責JY
〒541-0052 大阪市中央区安土町1-6-19 プロパレス安土町ビル7階D号 株式会社 SPLENDID21
tel 06-6264-4626 ✉ info@sp-21.co.jp     https://sp-21.com

このサイトをご覧になられ、財務分析やそれを超えて経営診断スキルアップをご検討の方は「ビジネス即戦力の財務分析講座(初級・中級・上級)」「M&A戦略立案のための財務分析講座」をご受講下さい。ご案内はここをクリックして下さい。

SPLENDID21NEWS第197号【2022年4月15日発行】としてA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。

SPLENDID21NEWS第197号ノーリツ鋼機

2022年4月22日金曜日19:00~ノーリツ鋼機のZoom解説会を行います。

参加無料、どなたでもご参加いただけます。

説明・お申込みはこちらから

Facebook
X
Email
Print
Picture of 企業評価・経営者評価のスペシャリスト 山本純子
企業評価・経営者評価のスペシャリスト 山本純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
Picture of 企業評価・経営者評価のスペシャリスト 山本純子
企業評価・経営者評価のスペシャリスト 山本純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
関連記事

今回の記事は、タマホーム株式会社についてです。不動産業界は職人不足による施工費用の高騰・2021年のウッドショック・世界的インフレの現在まで、売上原価の上昇が長らく続いてます。タマホーム株式会社は「より良いものをより安く […]

今回は、「一人あたり売上高」や「一人あたり総利益」といった“生産効率”と呼ばれる財務指標カテゴリに着目した記事です。生産効率の悪化は給与アップができていないことを意味しますので、人材獲得合戦の時代には見過ごすことができま […]

簡単な概要を書く場所 ○○株式会社の概要 吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。 企業名 タマホーム株式会社 証券コード […]

新着記事
カテゴリーで探す
目次