今回はフードビジネスで人材レベルの向上を目指す日本レストランシステムと、売上高1兆円を目指すZ社を比較してみましょう。(2024年現在:ドトール・日レスホールディングス)
総合評価は見事な右肩上がりで、営業効率、資本効率は天井打ちしている①にもかかわらず、経常利益増加率は右肩上がりに推移している②という、極めてまれな形状になっています。
こういう形状の企業は大抵、経営革新を起こす「しくみ」が内部化されており、かつ、人材教育に熱心であることが多いのです。なぜなら、経営革新は、人的資源管理が的確に行なわれている企業でないと起こせないからです。
日本レストランシステムの経営の最重要課題は「企業は、最後は人で決まる」との観点から、人材のレベルをいかにして向上させていくかに置いています。
同社は業態開発の優位性、また、収益性の高さや財務基盤の安定性を背景に、従業員教育、優秀な人材の獲得つなげ、人材レベル向上の善循環を目指しています。
また、日本レストランシステムは、生産効率が赤信号領域にあり③、営業効率が青信号領域で天井打ちしている ことから、売上高至上主義の企業ではなく、質的経営を優先する企業であると推察されます。
売上高総利益率が76.95%、売上高経常利益率が21.09%という素晴らしい数値となっています。
下のグラフは売上高1兆円を目指すZ社です。急激な売上拡大は総資本を膨張させ、負債過多を引き起こすリスクと隣あわせです。
また、従業員の急増に人材育成も追いつかないというリスクも負わなければなりません。
下グラフ1段目は日本レストランシステムとZ社の売上高増加率です。
急成長の日本レストランシステムの売上高増加率はどちらと思われますか。もうおわかりですね。
左の売上高増加率が低調な方です。
上グラフ2段目は両社の従業員増加率のグラフです。
上グラフ3段目は両社の総資本増加率のグラフです。
どちらも右グラフの縦軸の目盛りの大きさにびっくりされていることでしょう。
1980年の吉野家の倒産は200店舗の次は300店舗と急成長路線を突っ走り、店舗数に見合った牛肉量が確保できずに調達コストを増加させ、コスト削減のために冷凍肉や加工肉を使用したり、たれを粉末にしたりして味の劣化を招いたことが原因です。
高い売上目標を掲げることは多くの人にわかりやすいためリーダーシップの発揮には有効です。また、市場占有率獲得が必須の場合には上に述べたリスク以上の価値があると判断される場合もあります。
これに対し、日本レストランシステムは味にこだわり、商品開発を行う一方、既存店の活性化に力を注いでいます。
まとめ
「新規出店でしか売上が伸びない」との嘆きが聞かれる業界において、①経営課題を人材のレベルをいかにして向上させていくかに置き、②「既存店の活性化で質的経営の向上」を目指す、日本レストランシステムが力をつけている事実は見逃せません。
SPLENDID21NEWS第13号【2006年12月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。