今回は、エイチ・アイ・エスを見てみましょう。大阪府出身の澤田秀雄会長、若いころ世界を旅行し、その体験から「もっとリーズナブルに旅行できたら」という思いで創業された会社です。澤田秀雄会長は優秀な経営者として、マスコミに取り上げられることも多く、よくご存じの方も多くいらっしゃいます。また、明るく、楽しい広告で、1度や2度、ツアーをご利用になった方も多いのではないでしょうか。
それでは見ていきましょう。
企業力総合評価は青信号領域を130.84→ 128.08→ 123.38→ 124.85→ 122.74と若干の悪化トレンドで推移しています。悪化原因は、下位各親指標を見ると分ります。営業効率(儲かるか指標)、資本効率(資本の利用度指標)の連続4期の下落が大きな引き下げ要因です。また、生産効率(人の利用度指標)も連続3期下落しています。資産効率(資産の利用度指標)は青信号領域をわずかに悪化しています。流動性(短期資金繰り指標)はリーマン・ショックの後、急改善させました。安全性(長期資金繰り指標)は天井値に近い値をとっています。
つまり、リーマン・ショック後の流動性の改善対応や、安全性が安定して良いところから、財務内容が優秀な会社であること、日本の景気後退局面の長期化の中で、収益性が悪化を免れない状況にあることがわかります。
営業効率の各下位指標を見てみましょう。
数字だけでは読みにくいので、グラフにしてみましょう。
2009年減収になりましたが、売上総利益率が急改善しています。売上高が11.7%減少する中で、売上総利益率14.25%から17.21%へと3.04%改善しています。
この数値の変化から何を推測しますか。
経営者なら、誰もが興味を持つところでしょう。
改善要因は、燃油サーチャージの値下がりや原価管理の強化にあったようです。燃油サーチャージとは、燃料とする油(灯油、軽油、重油など)の価格に追随する、運賃とは別建てで徴収される料金のことですので、市況に寄ります。しかし、原価管理の強化は自社の内部の経営努力で可能となります。
今後、エイチ・アイ・エスはどこへ向かうのでしょうか。営業効率の連続下落していますが、かなり強気な会社であるようです。
従業員増加率は4期連続増加しています。総従業員数は、 5,288人→ 5,546人→ 5,791人→ 6,389人→ 7,839人と推移しています。
2005年10月から2010年まで、 九州産業交通(現 九州産業交通ホールディングス)に資本参加、エイチ・アイ・エス エクスペリエンス ジャパン設立、H.I.S. Travel(U.A.E.)L.L.C.設立、H.I.S. Travel Nederland B.V.i.o.設立、H.I.S.(PHILIPPINES)TRAVEL CORP.設立、H.I.S.(HAINAN)INTERNATIONAL TRAVEL SERVICE CO.,LTD.資本参加、国内初のホテル「ウォーターマークホテル札幌」をオープン、欧州エキスプレスを子会社化、ハウステンボスを子会社化H.I.S.(SHANGHAI)INTERNATIONAL TRAVEL SERVICE CO.,LTD.を設立と拡大してきています。
まとめ
営業効率は4期連続悪化しています。売上高経常利益率も1.44%となり、もうすぐ赤信号領域ですので今後改善に向けて手を打つ必要があります。M&Aなどで得た子会社などの収益化が遅れているのでしょう。オンライン旅行会社エクスペディアの日本進出もあります。優秀な澤田秀雄会長のこと、営業効率反転、改善の秘策はお持ちなのでしょう。
SPLENDID21NEWS第67号【2011年6月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。