今回は、株式会社アデランスを見てみましょう。アデランスはアートネイチャーと並ぶシェアを誇るカツラのトップメーカーとして君臨しています。また近年はヘアーケアー事業、芸能用の衣装・ヘアーメイキングなどにも取り組んでいます。
過去2002年から2011年までの10年間を見てみましょう。
企業力総合評価は、2006年まで高位安定的でした。どうしたものか翌年から急落し始め、164.70→152.31→145.60→110.02→92.19と2011年には黄信号領域まで来てしまいました。破綻懸念60までの時間=悪化成り行き倍率もあと2年しかありません。
これほどまでに企業力を下げた原因は何でしょうか。営業効率(儲かるか指標)資本効率(資本の利用度)が青信号領域の天井から、赤信号領域の底値まで落ちてしまいました。生産効率(人の利用度)も悪化し、赤信号領域です。流動性(短期資金繰指標)も悪化しています。営業効率、資本効率、生産効率、流動性と4親指標が下落していますから、企業力総合評価は下がったのでしょう。
ここで、上グラフを見まわし、アデランスがここ数年、どのようなかじ取りをしてきたか予想してみましょう。資産効率(資産利用度の指標)赤信号領域の底値から青信号領域へ急改善しました。この指標は、少ない資産で大きな売上を上げると改善する指標ですから、売上が少なくなり、資産を売却するなどのリストラをかなりしてきたのではないかと予想します。当然、従業員数も減らしているでしょう。
しかし、生産効率指標をみると、生産効率も悪化しています。人員リストラをしたとすれば、不思議ですね。生産効率は分母が従業員数ですので、リストラをして従業員数が減れば、生産効率は上がってくる筈です。更に言えば、人員リストラは営業効率を上げる為にしますから、営業効率は上がるはずですが、悪化しています。打つ手が空回りしている感があります。
数字を検証してみましょう。
アデランスは資産を916億円から395億円に減らし、従業員も5787人から4500人とリストラしています。売上高、経常利益も下落し赤字になっています。予想どおりですね。
部門別売上高の推移を見てみましょう。
オーダーメイドかつらの売上ボリュームが高く、急激に悪化しています。安価なレディメイドかつらの売上は少なく、下落幅は小さいようです。
それにしても、売上の減少は相当厳しいように感じます。
日本経済が長期に低迷する中、高価なオーダーメイドかつらの比率が高かった上に、医師が抜け毛、発毛を治療するようになるなど、外部環境要因の変化に対応できなかったのではないでしょうか。
まとめ
人員リストラは営業効率を上げる為にしますから、営業効率が下がっているのはリストラが失敗したと言えます。そもそも売上高が65%になったのに対し、従業員は77%ですので、生産効率も改善するわけがありません。そうすれば、士気が下がります。残った従業員は、「今度は私に回ってくるかも」と不安になるからです
SPLENDID21NEWS第71号【2011年10月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。