今回は、養命酒酒造株式会社を分析してみました。養命酒は、1602年 (慶長7年)信州伊那の谷・大草(現在の長野県上伊那郡中川村大草)の塩沢家当主、塩沢宗閑翁によって創製されました。以来、養命酒は4世紀にわたり、休むことなく造り続けられています。今は大正製薬株式会社が、同社の株式の20%を保有しています。
それでは分析結果を見てみましょう。
総合評価は、172.25→171.91→167.89→163.33→165.84と推移しています。申し分のない総合評価です。ほんの少しの悪化は、営業効率(儲かるか)、資本効率(資本の利用度)、生産効率(人の利用度)の悪化に問題があるようです。
営業効率は、高いポイントから3期連続悪化し、2012年反転しました。儲からなくなった原因はなんでしょうか。そして反転した理由は?興味は尽きません。資本効率も同様です。
生産効率は、残念ながら4期連続悪化しています。4期連続悪化は良くありません。この指標がノーマークで経営されている可能性があります。また、新しい業界に進出した時もこのようなことが起こります。
資産効率(資産の利用度)は5期連続底値です。売上規模に対して総資産が多すぎるようです。しかし、営業効率が下がってきたとはいえ、青信号領域ですので、問題は少ないと読めます。
流動性(短期資金繰り)、安全性(長期資金繰り)は天井値です。流石、歴史の長い会社ですね。(大正12年(1923年)設立)
営業効率の下位指標を見てみましょう。
4年間で、売上高総利益率が4.23%下落しています。物凄い下落です。減収で、固定製造設備の負担割合が増えた以外に、デフレによる売価下落、新しい業界へ進出したなどの可能性があります。いずれが原因でも、阻止しなければなりません。
販売費・一般管理費率も悪化しています。
財務コストは改善でした。財務体質が良いということは、ありがたいことですね。
酒造各社の売上高総利益率を比較してみました。養命酒酒造は、ぶっちぎり。それでも、売上高総利益率が悪化したことを指摘する理由はお分かりでしょうか。それは、「強みの危機」であるからです。
2010年4月、長野県諏訪市に施設運営事業部(店舗名称くらすわ)を開設、主に食品類を中心とした商品の販売とレストランの運営を始めました。飲食は1人当たり売上が少ない業種ですので、生産効率悪化の原因はこれにあるかもしれませんね。
施設運営事業の売上345,331千円に対してコストが790,480千円のコストがかかり、445,149千円の赤字です。投資も大きく養命酒事業のおよそ30%にあたる額が投下されています。
施設運営事業が営業効率、資本効率を悪化させているようです。投資額が多かったようですが、財務体質が良い会社のため、その部分ではびくともしなかったということです。
まとめ
養命酒の素晴らしさは、400年の歴史が証明します。しかし、収益の柱を増やそうとすれば、リスクが伴います。財務体質までの悪化はありませんでしたが、新規事業の黒字化が遅れていることが心配です。
SPLENDID21NEWS第91号【2013年6月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。