今回は、ソニー株式会社について分析しました。売上高8兆1057億円、子会社1,327社、関連会社数110社、従業員数125,300人を擁し、モバイル・コミュニケーション、ゲーム&ネットワークサービス、イメージング・プロダクツ&ソリューション、ホームエンタテインメント&サウンド、半導体、コンポーネント、映画、音楽、金融及びその他の事業を営むコングロマリットです。
2007~2016年3月期までの10年を分析してみました。
企業力総合評価は、
108.86P→124.70P→83.73P→98.39P→100.76P
→75.69P→98.82P→87.86P→89.21P→101.16Pと推移し、長期にわたり黄信号領域にあり、厳しい経営状況から抜け出すことが出来ません。
営業効率(儲かるか)、資本効率(株主指標)は赤青ゼロ判別ジャッジ上で反転を繰り返しています。
生産効率(人の活用度)は後半改善してきています。2008年180,500人の従業員数が125,300人と30%削減しているための改善です。そもそも、人員リストラは営業効率を回復させる為に行うもので、営業効率の改善はしておらず、リストラの失敗を意味します。そのような場合、残った従業員の士気の低下が起こる場合が多くあります。
資産効率は悪化しています。資産と売上の関係ですから、資産の増加が激しいのです。
流動性(短期資金繰り)、安全性(長期資金繰り)は赤信号領域から出る気配がありません。
親指標を縦覧すると、6指標中3指標が常時赤、2指標が半分の確率で赤信号となり、V字回復が急がれます。
ひょっとしてSPLENDID21NEWSをいつも愛読されている方は、回復が出来ないことの要因となる数字の癖を見抜かれた方がいるかもしれません。
違和感を覚えるのは、生産効率の改善と資産効率の悪化がセットになっていることです。生産効率は売上と従業員数の関係、資産効率は売上と資産の関係で、売上は共通しています。なぜ、従業員ばかりが減り、資産が増えるのでしょうか。
下のグラフは総資本増加率と従業員増加率のグラフです。増加率は前年と比較しています。
0%以上をつけると赤信号、以下であると青信号にプロットされます。従業員数も総資産も増加したらすなわち悪かといえば、そうでもないのですが、売上高増加率、経常利益増加率(今回はグラフなし)と共にバランスを崩すと経営上の問題が起こることが多いので、色分けをしています。
2009年までは2指標は同調した動きですが、2010年から外れ始め2012年以降は全く別の動きをしてバランスを欠いています。これではV字回復できません。
このグラフは、従業員リストラをして、資産リストラをしないことを意味します。従業員が資産を利用して利益を生み出すのですから、営業効率が悪いのは、資産の活用と従業員の活用の両方に原因があります。従業員数を減らしても利益を生まない資産を増加させたのでは営業効率は改善する筈はありません。
先月のSPLENDID21NEWSで取り上げたパナソニックも総資産を大きく減らしてV字回復を達成しています。
リストラといえば従業員削減だけをイメージする方が多いのですが、リストラとは、企業が不採算部門をやめたり、新規事業に乗り出すなど、事業構造の転換を目指すことですから、ソニーのように従業員数が30%も減っている中では不採算部門をやめるため総資産も減るのが普通なのです。
資産を減らしたら損するじゃないのと考える方もあるかもしれません。個人は資産をもっていればお金持ちで、それを無くすことは損することを意味します。しかし、会社は少し意味が違います。会社の財産の状況を示す貸借対照表は、資産と同額の負債と純資産が計上されています。資産が増えるということは、負債か純資産が増えるということです。ソニーは業績が悪いので純資産はあまり増えません。ですから、資産増加と一緒に増えるのは負債です。
実際、ソニーの自己資本比率は、28.77%→29.81%→26.77%→25.54%→22.72%
→18.73%→18.87%→18.18%→18.49%→18.74%と減少しており、すなわち負債が増えていたことを示します。
まとめ
ソニーがV字回復できないのは、目標設定の数字のバランスが悪すぎると言えます。前回のSPLENDID21NEWSでパナソニックには数字の番人のような方の意見が尊重されている旨を述べましたが、正にそのポジションが無いか、軽んじられているのではないでしょうか。
もっと知りたい!「資産を増やすと負債が増える」
SPLENDID21NEWS第135号【2017年2月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。