NTN株式会社はベアリング大手4社の一角です。ベアリングは産業の米と言われるほどの製品ですが、昔から、価格カルテルの問題を引起こし、業界が変われるかが課題となっています。課徴金減免制度(当事者が申し出ると、課徴金が全額免除され、刑事告発対象から外れる)をジェイテクトが利用したため発覚しました。刑事告発は2012年行われました。
経営状況を俯瞰する NTN
NTN株式会社の2014~2023年3月期までの10年間の連結財務諸表を分析しました。2023年3月期は第3四半期のデータです。それに伴い、従業員数を調整しています。
親指標6つのうち4つ赤信号領域に入ると倒産へのカウントダウンが始まります。2020~2022年は4つ赤信号領域です(黒丸)。企業力総合評価が青信号領域にとどまっているため、気付き難いのですが、このように読みます。多変量解析企業力総合評価分析SPLENDID21は早期発見の仕掛けがありますが、素手で財務諸表分析をしてもほぼ気付かないでしょう。
結論としては、すぐ倒産することはありませんが、会社自身としては十分な危機感が必要です。
今であれば、大きな犠牲を出すことなく、再び成長に転ずることが可能です。
NTN株式会社は1918年創業、1927年法人化しています。それにしては安全性がもっと良くてもよさそうですが、そうなっていません。価格カルテルの問題は1973年にもあり、その時の傷みもあったのかもしれませんが、管理・保全の意識が希薄な体質があるのかもしれません。
営業効率に現れる短期志向・売上高志向 NTN
営業効率の各下位指標を確認してみましょう。
各グラフをパッと見て顕著なのは、売上高販売費及び一般管理費比率(売上高販管比率)の連続悪化です。この指標は費用項目なので右肩上がりであれば悪化です。2014年から始まり2021年まで悪化の一途を辿っています。数字を短期にしか見ない、この数字自体をよく見ない会社にありがちな傾向です。そのため、売上高営業利益率・売上高経常利益率が悪化の一途となります。
その中で、2019年から売上高総利益率の悪化を許したため、2021年営業損失を計上してしまいました。2019年かから2021年までの大きな減収対応として2022年M&Aをして子会社を取得したあたり、売上高に対する感度は高いですが、利益率に対する感度は低いと言わざるを得ません。
どこに向かっているかは過去10年でわかる NTN
2014年を初年度としたグラフです。
経常利益が大きく減少し厳しい状況です。
総資産の変動は少ないが利益のマイナスが大きいため、財務体質悪化してしまいます。
従業員数以上に売上高や利益が上がらないので生産効率が悪化し、2021年以降売上高以上に総資産が増えているので、資産効率も心配となります。
まとめ
長期にわたり悪い安全性に対し増収には感度が高いことから短期志向と考えられます。売上高は伸ばしても営業効率は長期に悪化し続けるところから、売上高優先の傾向があり、管理・保全の志向は希薄で利益が細っていくのでしょう。これが価格カルテルに参加してしまう原因ではないでしょうか。
編集後記 東大寺二月堂修二会(お水取り)に行ってきました。松明の火の粉をかぶり、無病息災を祈りました。最近とても暖かいですね。 (^^♪文責JY 〒541-0052 大阪市中央区安土町1-6-19 プロパレス安土町ビル7階D号 株式会社 SPLENDID21 tel 06-6264-4626 ✉ info@sp-21.co.jp https://sp-21.com |
このサイトをご覧になられ、財務分析やそれを超えて経営診断スキルアップをご検討の方は「ビジネス即戦力の財務分析講座(初級・中級・上級)」「M&A戦略立案のための財務分析講座」をご受講下さい。
ご案内はここをクリックして下さい。
SPLENDID21NEWS第208号【2023年3月15日発行】としてA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。
2023年3月27日月曜日19:00~Zoom解説会を行います。
参加無料、どなたでもご参加いただけます。