半導体メーカーのローム株式会社は、株式会社東洋電具製作所として1954年設立されました。社名は、創業当時の生産品目である抵抗器(Resistor)の頭文字「R」に抵抗値の単位Ω「ohm」を組み合わせたものです。同社は、日本産業パートナーズ(JIP)の買収提案に参画し、株式会社東芝に最大3000億円規模の投資を行う検討をしているとの報道がありました。総資産額が1兆円を超えたところの同社が3000億円の投資、驚きを隠しえません。
ロームの経営を俯瞰する
ローム株式会社の2013~2022年3月期までの10年間の連結財務諸表を分析しました。
企業力総合評価は、150.47P→162.11P →166.11P→161.72P→161.36P →164.92P→166.70P→161.13P→161.76P→168.11Pと推移しています。元々高かったのですがうねりながら更に成長しています。うねりの理由は営業効率・資本効率です。生産効率が右肩上がりトレンドなのは、上場企業らしい動きです。流動性・安全性が天井値なので、資産効率が底値なのは、財務体質が良すぎての事でしょう。前月に取り上げた帝国ホテル株式会社と同じです。
営業効率がマネジメントの秀逸さを示す ローム
営業効率はうねりながら天井値に向かって行っています。各下位指標はグラフを読んでみましょう。
増収・減収を繰り返しながら増収トレンド、売上高総利益率も改善・悪化を繰り返しながら改善トレンド、売上高販管比率は一貫して改善トレンドです。また、2019年12月にパナソニック株式会社(現パナソニックホールディングス株式会社)から半導体デバイス事業の一部を譲り受けていますが、他に買収はありません。増収は自力で行っているようです。
売上高販管比率の改善が見事です。半導体市況の影響を受けるため、売上高や売上高総利益率は変動しますが、販売費及び一般管理費は自社で管理が効きます。自分でできることはキッチリ努力し結果を出していると読み取れます。マネジメントが上手い会社です。買収案にのって手腕を生かすことができればうまくいくかもしれません。
4000億円の投資をシミュレーション ローム
財務体質はどうなるのでしょうか。ローム株式会社の2018年から2022年までの貸借対照表と2022年の貸借対照表をベースに3000億円の投資有価証券(固定資産)と長期借入金(固定負債)が増加した場合の貸借対照表を示します。2022年で現金預金が2,931億円と総資産の28%が現金預金というキャッシュリッチな会社です。あり得ませんが、現金預金で買うにはそれでも69億円足りません。
借入をして投資しても、固定比率(固定資産÷純資産)100%未満、純資産比率63%という凄まじさ。
見事という他ありません。
こんな時の為にローム株式会社はマネジメントを磨き、財務体質を強靭化してきたのでしょう。ローム株式会社の歴代経営者は、未来の会社の為に静かに着実に用意をしてきたのでしょう。「千載一遇のチャンスが来たときにつかんでくれよ。」そんな声が聞こえてきそうです。
まとめ
日本産業パートナーズ(JIP)の買収提案は、複数企業が参画し、ローム株式会社だけではないという言う事です。ローム株式会社自身がコントロールできるなら成功しそうですが、そうでなければリスクがあります。
編集後記 財務体質は未来への贈り物です。プラスの贈り物もあればマイナスの贈り物もあります。貸借対照表が読めないとは、プラスかマイナスかわからないということです。 (^^♪文責JY 〒541-0052 大阪市中央区安土町1-6-19 プロパレス安土町ビル7階D号 株式会社 SPLENDID21 tel 06-6264-4626 ✉ info@sp-21.co.jp https://sp-21.com |
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