今回は、見事V字回復を果たしたパナソニック株式会社を分析してみました。具体的な製品や投資についての考察ではなく、あくまで財務分析数値でV字回復の理由を探ります。財務指標の動きですからどのような業種であっても自社に当てはめて頂けます。
下記グラフは、2007年~2016年3月期までの10年間です。
企業力総合評価は、132.85P→132.39P→90.57P→101.36P→109.65P→70.08P→67.58P→110.16P→112.47P→117.05Pと推移しており、直近3年に正常圏で安定しました。
営業効率(儲かるか)、資本効率(資本の利用度)は企業力総合評価と同じ形状をしていますから、これが悪化し総合評価がさがり、これが牽引し総合評価は改善したと言えます。
生産効率(人の利用度)は、10期とも青信号領域にあります。主に売上と従業員数の関係指標なので、減収以上に人員リストラを行った為です。
資産効率(資産の利用度)は改善しています。これは資産と売上の関係ですから、赤字やリストラで減収以上に、大きく資産を減らした為の改善です。
流動性(短期資金繰り)は、悪化トレンドから反転しました。安全性(長期資金繰り)も同様です。激しい赤字の中、青信号領域を維持、内部留保の厚い老舗企業と思います。
上表は数字ばかりで読み難いので、V字回復をけん引したと思われる数字の動きを取り出しグラフ化しました。売上高と売上高総利益率です。
上記で特異な関係性の年が1年だけあります。それは2011年です。売上高総利益率が悪化と増収の組み合わせです。他は売上高総利益率悪化の年は必ず減収です。
(売上高総利益率改善の時は増収でも減収でも構いません。)
2011年のこの動きが引き金となって、パナソニックは2012年2013年谷を刻みました。この失敗ののち、パナソニックは、売上高総利益率の連続改善の道を進みました(○)。
上グラフは売上高総利益率と企業力総合評価を重ねたグラフです。象徴的な3年を矢印で表現しています。売上高総利益率は企業力総合評価の先行指標なのです。
なぜ、売上高総利益率が企業力総合評価の先行指標なのでしょうか。
売上高総利益率が悪化すると、売上高営業利益率、売上高経常利益率を連動して悪化させないために、販売費及び一般管理費を削減して悪化を食い止めようとします。今期、売上高営業利益率が悪化を食い止めたとしても、削った販売費はその後の売上を上げるコスト、一般管理費は無駄を見つけ効率化を進めるコストですから、それらの削減は、時をおいて企業を弱らせるのです。
まとめ
売上高総利益率は時間という奥行をもっており、未来に影響を与えます。パナソニックには、数字の番人のような部署があり、どのような数字にもっていくかを決めていると推察されます。
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