企業分析ナレッジ

棚卸資産回転期間と1人当たり売上高の秀逸さ ユナイテッドアローズ 

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今回は、人気ブランド、株式会社ユナイテッドアローズを分析しました。ユナイテッドアローズは、1989年、元ビームスで現在ユナイテッドアローズの代表取締役社長を務める重松理氏らがワールドのバックアップを受けて立ち上げたのが始まりです。

会社名は、毛利元就の「三本の矢」の考えを根底にした「束矢理念」から由来します。ファッション感度の高い層をターゲットとし、自社デザイナーがデザイン・プロデュースした衣類や小物などを全国の直営店で販売する他、海外の衣類や装飾品、小物類の輸入・販売も手がけています。また、いわゆるセレクトショップ運営者としては唯一の公開企業であり、東証一部に上場しています。

企業力総合評価は、137.15→134.49→138.73→129.29→135.87と推移しています。青信号領域を、安定して推移していると言えるでしょう。

営業効率(儲かるか)は、2009年(リーマン・ショック)で谷を刻みましたが、順調に回復し、天井値に達しています。資本効率(資本の利用度)も同様です。

生産効率(人の利用度)は安定して改善しています。見事ですね。

資産効率(資産の利用度)も青信号領域です。

流動性(短期資金繰り)は、2009年2010年は改善し、2011年急落、2012年戻っていません。

安全性(長期資金繰り)は悪化トレンドです。

全体を総括すれば、財務体質(流動性、安全性)は悪化、または不安定といえますが、攻めの経営が成功し、営業効率、資本効率、生産効率を上げていると読めます。

ユナイテッドアローズはどのように経営をしたのでしょうか。それが一番気になるところです。

同社は、商品の消化施策の計画精度を高め、消化率を週次で適正管理することで、たな卸資産の効率を改善しました。

また、商品、販売、宣伝部門の連携サイクルの徹底強化と精度向上を図ることで売上高を増加しました。商品部門では、販売部門から収集したお客様の声を活用し、品ぞろえの精度向上につなげる取組みを強化し、販売部門では、店舗マネジメント力を向上させ販売力を強化したほか、陳列装飾の精度向上に取組みました。宣伝部門では、店頭の商品展開と連動した上で、各種販促ツール、ウェブサイト、ソーシャルメディアやマスメディアを戦略的に使い分けた宣伝活動を実施しました。

また、不採算事業の撤退を優先して行いました。

左下の表が示すように、売上が増加している中での棚卸資産の圧縮、従業員が増加している中での1人当たり売上高の増加が、その成果を示す指標であると言えます。SPLENDID21NEWSでよく取り上げていますが、成長する企業は「攻め」と「守り」共に取り組んでいます。

棚卸資産回転期間、1人当り売上高が、4期連続して改善しています。4期連続改善は、偶然ではありません。必ず、この指標を改善するという目的、目標を持って経営しています。

中小企業の場合、この2指標を見ていない会社が多く見受けられます。しかし、これらの指標は、資産効率、生産効率にとどまらず、営業効率、流動性、安全性にも影響を与えますから是非とも時系列でチェックしたいものです。

営業効率の各下位指標を見てみましょう。

売上総利益率を見てください。デフレで、値段が下がり、利益を圧迫する今の日本で、売上高総利益率が改善トレンドです。また、売上高営業利益率も改善し、6.83%から9.99%になっています。なかなか立派な数字ですね。

この高利益率への努力が、なかなか決断し難い撤退戦略を可能にします。つまり、撤退で特別損失を出してもびくともしない経常利益を稼いでいるのです。そして、赤字店の撤退は、その後の利益を押し上げるという善循環を起こすのです。

まとめ

ユナイテッドアローズは、高い商品を扱っています。デフレだから、売上が上がらない、利益が出ないというのは言い訳にすぎないと教えてくれているようです。

SPLENDID21NEWS第87号【2013年2月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。

sp21news087ユナイテッドアローズ

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Picture of 企業評価・経営者評価のスペシャリスト 山本純子
企業評価・経営者評価のスペシャリスト 山本純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
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株式会社SPLENDID21 代表取締役。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
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