今回は、今話題の株式会社日本航空です。1月19日に会社更生法を申請し、再建を目指します。コスト高・天下り体質などの言葉をよく聞きますが、実際の数字をじっくり見てみましょう。
分析結果は以下のとおりです。
企業力総合評価は、赤信号領域を乱高下しています。
企業力総合評価の形状は、生産効率、資産効率を除き、良く似た下位指標が多いことに気づきます。この様な形状が良く似るケースは安全性が悪い会社の特徴です。会社を経営していれば、良い時もあれば悪い時もあります。しかし、良い時、利益剰余金を積み増しして、自己資本比率を上げるなど地道な努力をしている会社は安全性が良く、不景気でも持ちこたえる体力を持っています。それが出来ていない為、営業効率が悪くなると流動性も悪くなり、安全性も悪くなり、企業力が乱高下します。
2006年3月期に安全性は底値にかなり接近しています。そこで2007年3月期に、新株発行し純資産を1,321億円増加させ、改善しています。2008年3月期にも、第三者割当増資等により、純資産を前年対比1,700億円増加させ改善させました。しかし、2009年は営業効率悪化の影響をモロに受け、安全性を引き下げてしまいました。先に述べた「不景気でも持ちこたえる体力がない」ということです。
肝心の営業効率はどうなっているのでしょうか。全日本空輸株式会社との対比で見てみましょう。売上高は日本航空が全日空の1.6倍から1.4倍と上回っていますが、利益率は芳しくないようです。
儲けの元である売上高総利益率の全日空との差は最大9.32%とかなりです。2008年3月期にリストラの成果が出て4.78%と差を縮めましたが、満足のいくものではありません。
吉野家ディアンドシーは狂牛病からのV字回復で6.67%売上高経常利益率を改善させました。日本電産サーボは永守社長が入って7.48%改善させました。
吉野家ディアンドシー、日本電産サーボと日本航空と何が違うのでしょうか。
1つに、営業効率改善度が低すぎたことでしょう。寡占の航空業界にあってはライバルの全日空の数値を無視できません。やれるだけやりましたでは足りないということです。
2つに、安全性が悪いまま長く放置されたことです。吉野家ディアンドシーの自己資本比率は2004年で64.3%、日本電産サーボは2005年で32.7%です。恐慌が起こって、会社の助けになるのは安全性です。
日本航空の分析結果とよく似た会社はとても多いのです。
良い時、節税をし、安全性は悪いままに放置され、利益率が低いまま恐慌を迎えた会社です。
「航空2社の財務分析数値は、大企業だから、中小企業の自分の会社は参考にならない。」と考えるのは間違いです。財務分析は比率ですから、規模の大きさは関係ありません。
まとめ
自社を分析してみましょう。数字は正直です。景気や政策が悪いといっても経営者の責任は免れません。ダメな数字では、ダメなのです。
日本航空は国が助けてくれますが、貴方の会社は誰も助けてくれません。
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