今回は、壱番屋の分析を見てみましょう。壱番屋はカレーハウス「CoCo壱番屋」、あんかけスパゲッティ「パスタデココ」、カレーらーめん「麺屋ここいち」など国内1165店舗、海外24店舗を展開する外食チェーンです。少子高齢化で胃袋が少なくなる中、出店過剰傾向に苦しむ外食産業界にあって、定規で引いたかと思われるような成長曲線を描いています。
企業力総合評価は着実に伸びてきています。この成長を支えたのが、営業効率です。利益率が改善し(営業効率が改善)、お金が貯まって流動性が改善し、利益が出て内部留保が高まり安全性が天井値に向かって改善している様子が見て取れます。
外食産業では、バラバラにあるお店ごとに人を配置するため、生産効率はなかなか上がりません。そのため、多くが赤信号領域から抜け出せないでいます。
また、食材が腐りやすいこと、現金商売であることが多いため、棚卸資産は少なく、売掛債権も少ないため、流動性も赤信号領域にある会社が頻繁に見られます。
そんな中、生産効率がもうすぐ青信号領域、流動性は青信号流域に行くなど目覚ましい躍進を示しています。
営業効率の各指標は左の表のとおりです。売上総利益率が連続下落していますが、売上高経常利益率は連続して改善しています。売上高経常利益率の4期連続改善する会社は、無駄を排除する姿勢が会社内、隅々まで行きわたり、社員全員の意識改革された会社でないと達成できません。
壱番屋は値引きをしません。客単価800円で、適正利潤を得ることを貫きます。SPLENDID21NEWSでは今まで沢山の外食産業の企業を取り上げてきましたが、クーポンを配ったり、値引きをしたりする会社はほとんど営業効率が悪化し、総合評価が悪化トレンドでした。そして、それが業界のトレンドでもありました。
同じように値引きを嫌い、ほとんどしない日本レストランシステムが壱番屋と同様、企業力総合評価はなだらかに右肩上がり、売上高経常利益率も毎期連続上昇しています。
業界の常識はかならずしも正しいとは限りません。自社を見つめ、沢山のライバル企業を分析して、何が一番よいかを決定しないと誤った判断をします。
壱番屋独自の独立システムとしてブルームシステム(花が開くという意味)があります。一定以上のスキルと勤務期間を経た社員に与えられ、全国にある店舗のうち、多くがこのブルームシステムによって独立したオーナーによって、運営されています。
通常の外食チェーンの場合、直営店とFC店と比較すると、直営店の方が業績は良いですが、壱番屋では、社員として働き、仕事をマスターし、独立心が旺盛な店長のFCが多いからか、これに当てはまらない様です。
まとめ
創業者宗次二氏は社長在任中、朝4時過ぎに起き、会社に入るのはいつも5時前であったそうです。会社前の広小路通りの中央分離帯に冬はパンジー、夏はポーチュラカを植え、毎日、水やりと草引きを欠かしませんでした。役員の送別会も会費をとり、会社の経費にはせず、お客さまに配るレトルトカレーもポケットマネーで購入したそうです。
トップが襟を正すことがいかに大切か教えられる例です。
SPLENDID21NEWS第39号【2009年2月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。
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