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NOVA 社長の暴走を財務分指標で見抜く

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今回は、11月27日上場廃止予定のジャスダック上場NOVA分析です。

NOVAは90年代初頭、ほがらかなお婆さんが、さまざまなシーンで、毎度場違いとも思えるフレーズ「No problem. I am NOVA」と言い放つCMと、「駅前留学」というキャッチコピーで一躍脚光を浴び、企業の知名度を上げたことで知られています。また当時、外国人を講師に起用したり、最大3人(当時)までの少人数レッスン、前払いなら大量チケット購入による低料金も業界では珍しく、英会話業界の風雲児的存在となり業界TOPに躍り出ました。

ところが,急激な事業拡大による採算性の低下に加え,2007年6月に経済産業省から6ヶ月間の業務停止命令(「不実告知」「誇大広告」「債務履行拒否」など)教育訓練給付金の支給の対象となる教育訓練としての指定の取消処分を受けたこと等により,業績が急激に悪化した、との報道です。

従前の代表者である猿橋氏を解任するとともに,10月26日会社更生手続の開始を申し立てました。

総合評価は5年を通じて全て100ポイント以下で悪化が止まりません。2006年にはすでに51.23ポイントと実質破綻状態にありました。2005年以降で赤信号領域に入っていないのは辛うじて資産効率のみという状況です。

会社役員は、猿橋社長の暴走をなぜ止められなかったのでしょうか。

NOVA分析

NOVAの社是は9項目あります。そのいくつかを見ると、上記分析結果を予想させるものです。

自己確立: 常識と言うのはある種の思い込みであり、偏見であり、固定観念である。捕らわれ過ぎるのは非常に危険である。常識や偏見の枠を破ったときにこそ発想の飛躍が起きる。真剣勝負で出来上がったプランは100パーセント成功するものだ。

前進を忘れて現状維持の発想になったとき企業は終わる:利益はすべて投資にまわし、常に前進していくべし。企業としてのビジョンを追求し、理想や夢を実現させるために全力を尽くす。それが社会の中での企業の使命であり宿命です。前進を忘れて現状維持の発想になったとき……そのとき企業は終わりだと考える。

「数字を見ることなくどんどん前進していった」というのが分かりやすい表現でしょう。

SPLENDID21の分析結果を見る限り今秋の会社更生法の申し立ては2006年に行われてもおかしくない結果となっています。

マイカル・NOVA比較企業力総合評価

総合評価が反転することなく下落していった企業にマイカルがあります。このような悪化一途は企業が悪化・その度合いに気がついていない場合か、気がついていても対応が出来ない状況を示しています。

役員会無機化の状態です。

マイカルの破綻はお家騒動の為、役員会が機能していなかったと言われています。

NOVAの破綻は猿橋社長の暴走で、役員会が機能してなかったと言われています。

NOVAの役員の責任もかなりのものと思われます。

NOVAの安全性の各指標を見てみましょう。

NOVA安全性財務分析指標時系列データ

マイカルは、破綻前の固定比率1330.26、固定長期適合率130.45、自己資本比率5.72でした。

NOVA安全性分析

ところでNOVAのスポンサーとして名乗り出たのが、ジー・エデュケーション(ジー・コミュニケーション100%子会社)です。SPLENDID21の分析をしているとこのジー・コミュニケーションと言う会社によく行き当たります。焼肉のさかい、パオ(現社名 ジー・ネットワークス)の業績が悪化した際、TOBをするなど、かなり業績の悪い会社を買うことで有名な名古屋の会社です。

まとめ

5年間の推移を見る限り猿橋社長はもっと早い時点で経営責任を問われてしかるべきであったと思われます。経営を見える化し、誰が見てもおかしいと判断できることが重要ではないでしょうか。

勇ましい言葉や曖昧な表現で経営を表現してはいけません。

 

SPLENDID21NEWS第24号【2007年11月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。

sp21news024NOVA

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Picture of 企業評価・経営者評価のスペシャリスト 山本純子
企業評価・経営者評価のスペシャリスト 山本純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
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株式会社SPLENDID21 代表取締役。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
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