今回は、森精機製作所(2024年現在:DMG森精機)の分析です。森精機製作所のすごい点は、景気の影響を受ける設備投資産業であっても、最悪の時期に青信号領域を維持することができる、ところです。
富士通、日本電気の総合評価が、黄信号領域、赤信号領域に突入してV字回復しているのに比較し、森精機は5期とも青信号領域を推移しています。
また、日本の景況感を表す総合家電の2003年のV字回復後、一年のタイムラグで2004年に森精機製作所がV字回復していること、回復の状況が抜群であることが一目瞭然です。
森精機製作所は、2002年、2003年(上○)と景気の先行き不安によるユーザー層の設備投資抑制の影響を受け、厳しい受注環境に直面していました。
2004年は、国内では前期から順調であった自動車関連産業(グラフを見れば自動車産業の安定性が一目瞭然!)の設備投資に加え、急拡大しているIT関連産業からの受注も伸長し、特に10月以降、受注環境が大幅に好転しました。
森精機製作所のSPLENDID21の分析結果は以下のとおりです。
【森精機製作所の 3年連続増収増益の要因】
国内外の設備投資需要の好転 米国における直販体制の構築
千葉事業所完成による生産能力の増大
高性能・高品質・短納期の相乗効果による製品の競争力の強化
原価の低減に成功した新製品の売上に占める割合が増大
売上高、売上高総利益率ともに、3年連続上昇している力強い復活です。
しかし、森精機製作所は、先行きについて必ずしも楽観視していないでしょう。
設備投資需要には波があること、米ドルの対円為替相場が変動していることを考慮しなければならないからです。
森精機製作所は、先手を打ち、市場のパイが縮小する局面においても持続可能な利益を得ることのできるように、固定費の削減を推進して、強い企業体質の構築に努めていく方針を打ち出しています。
その方針の骨子は、 新製品の開発 生産リードタイムの短縮 本社機能の名古屋移転 海外における販売体制の強化 原価低減活動 為替リスクへの対応 です。
まとめ
企業は環境の中で影響を受けながら存在します。得意先分析といえば債権管理だけであれば、家電も自動車産業も分析は不要です。しかし、得意先の後を追うようにして自社の総合評価が変動する様を見れば他者分析の必要性は債権管理にあるのではなく、経営戦略上であることに気づきます。
森精機が本社機能を名古屋に移したのは地の利ばかりでなく、トヨタという安定した業績の得意先に自社の企業成長を見たのではないでしょうか。
SPLENDID21NEWS第11号【2006年10月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。