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日産自動車 停滞期・成長期・調整期

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企業の成長は一直線に成長していくわけではありません。波形を描きながら成長をします。そのため、停滞局面、飛躍局面、調整局面を経る過程を辿ります。

日産自動車停滞・成長・調整

今回は、日産自動車を停滞局面(上グラフ)、飛躍局面(同)、調整局面(後述)に分類して解説して見ましょう。いかにカルロス・ゴーン氏が優秀でも、企業成長に波動がある限り、どこかで調整局面に入ります。

詳しく解説をいたしましょう。

【停滞局面】(上グラフ

日産自動車株式会社は、1970年代~1980年代、戦後からシェアを積み上げ、一時はトヨタ自動車につぐ日本国内第2位のシェアを占めましたが、バブル崩壊後財務が悪化したうえ、デザインや商品戦略などの面でも失敗し、販売不振に陥り、国内の販売台数ではホンダにつぐ第3位に転落してしまいました。さらには、塩路一郎委員長率いる強固な労働組合との激しい抗争が深刻化し、1990年代の後半には経営危機がささやかれるまでになってしまいました。

総合評価は80ポイントと100ポイントの間の黄信号領域で低迷した。

【飛躍局面】(同

日産自動車株式会社は、1999年3月に、フランスのルノーと提携し、事実上のルノー傘下に入り、1999年4月にカルロス・ゴーン氏が来日します。6月にゴーン氏(現CEO)が最高執行責任者 (COO) に就任し、10月に日産リバイバル・プランを発表します。そのコミットメントの内容は

2000年度の黒字達成(必達目標)

2002年度までに連結売上高営業利益率4.5%(必達目標)

実質有利子負債残高1兆4000億円から7000億円以下に削減

2002年度までに連結ベースで1兆円のコスト削減

具体的には、購買コストの20%削減や部品や鋼材などの資材供給メーカーの半減を表明、日産関連会社の保有株の売却、村山工場閉鎖、日産車体京都工場閉鎖、愛知機械工場閉鎖などが実行されていった。

その結果、2000年3月期連結決算で過去最大の6844億円もの巨額赤字を計上した日産自動車株式会社は、わずか1年後の2001年3月期に過去最高の3311億円の連結最終利益を確保し、世間をあっと言わせることとなります。

総合評価は黄信号領域から、青信号領域へ脱出、109ポイントをつけた。

【調整局面】(下グラフ

2005年4月に、ゴーン氏が親会社のルノーの会長兼CEOに就任、日産の会長兼CEOも兼務することになります。2005年9月、ゴーン氏が進めてきた日産180(リバイバル・プラン)が終了します。そして、その後日米市場で販売台数が急落することになります。

日産自動車調整期分析

〈2006年6月28日の経済記事〉

日産自動車の販売不振が続いている。2005年10月以降、日米欧の三市場でほぼ毎月前年実績を割り込み、日米の主要工場で生産調整を迫られた。予想を上回る事態に販売会社や部品メーカーは当惑を隠せない。V字回復を主導してきたゴーン改革が限界に突き当たったのか、次の成長に向けた踊り場に差し掛かっただけなのか。日産の変調を分析する。

経済記事は以上のように、20066に日産自動車の変調を論じていますが、SPLENDID21はもっと以前20033月期の決算で日産自動車が調整期間に入る予兆を捉えています。(2003年3月期の決算で営業効率が天井に達しており(下グラフ)、これが翌期調整過程に入る予兆)総合評価は2003年3月期以降伸びてはいません。

むしろ、ここでは、日産自動車の安全性が、とうとう青信号領域に入ったこと(下グラフ)を強調したいと思います。あれだけ苦境に喘いでいた日産自動車を健全領域に戻したカルロス・ゴーン氏は、とりもなおさず、偉大な経営者だということが言えるでしょう。

日産自動車分析

まとめ

決算書は企業に存在するもっとも網羅性がある計算書類です。ボールペン1本買ったことまで集約されているのですから。決算書に含まれている情報を有効に利用すべきではないでしょうか。

 

SPLENDID21NEWS第10号【2006年9月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。

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Picture of 企業評価・経営者評価のスペシャリスト 山本純子
企業評価・経営者評価のスペシャリスト 山本純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
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株式会社SPLENDID21 代表取締役。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
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