企業分析ナレッジ

B-Rサーティワンアイスクリーム 財務指標の関連性の崩れ 

Facebook
X
Email
Print
目次

今回は、アイスクリームチェーンのB-Rサーティワンアイスクリーム株式会社を分析してみました。お出かけした時に頂くポップなアイスクリームとして定評がありますが、ハーゲンダッツや、コンビニなど、他業態の躍進があり、経営状況が気になります。

2011~2015年12月期までの5年を分析してみました。

 

企業力総合評価は、178.91P→182.25P→177.66P→137.13P→107.80Pと推移しています。2015年12月には、前年に比し29.33P悪化して107.80Pとなり、破たん懸念の60Pまであと47.80Pしかありません。もし同じトレンドで悪化したらあと2年(47.80P÷29.33P=2)で破たん懸念に達する危機的状況です。2014年2015年の企業力総合評価の悪化は、悪化トレンドの下位各親指標を原因としますが、すべての親指標が悪化トレンドであると確認できます。

下位各親指標は3つのグループに分けて捉えることができます。営業効率と資本効率、生産効率と資産効率、流動性と安全性です。
営業効率と資本効率(?グループ)は、それぞれ利益と売上の比率、利益と資本の比率を意味し、儲かるかという尺度です。このグループは2つとも急落し赤信号領域に突入していますから、企業力悪化に大きなインパクトを与えていると考えられます。
生産効率と資産効率(?グループ)は、それぞれ人の活用、モノの活用を売上高等で測った指標を意味し、管理の尺度です。このグループは、生産効率が4期連続悪化、資産効率が2014年12月期から悪化しています。このグループは、儲かるかの?グループとはある程度独立して管理できる指標です。
流動性と安全性(?グループ)は、それぞれ短期資金繰り指標、長期資金繰り指標を意味し、資金繰りの尺度です。このグループは、流動性の急落と安全性の緩やかな悪化です。このグループは?グループとは独立して管理でき、?グループとも関連があるもののある程度独立した管理ができます。

B-Rサーティワンアイスクリーム?の過去5年の経営状況の推移は、営業効率の急激な悪化をカバーすることなく、全ての指標を悪化したという特徴があります。そしてグループの独立性から、補完関係を期待できたにも関わらず、それが出来なかったことが分かります。

下記は、売上高、総資産、総従業員数、経常利益の2007年度比を2008~2015年分をグラフ化しました。ある年度を基準にした年度比は、それ以降の動きの同調性を確認するのに役立ちます。
2012年までは大まかに一致しています。実はこの4指標は普通、連動します。売上が上がれば従業員も増え、総資産も増加して利益も増加するという、通常の循環が起こるからです。

2013年神戸三木工場の用地を取得し、2014~2015年にかけて工場を建設したため、総資産は増加し、従業員も増加しましたが、売上が減少し、費用がかさみ、経常利益が大きく減少してしまいました。
つまり、?グループは、設備投資でコスト高になったところへ大きな減収となり、悪化しました。
?グループは、工場建設で従業員数が増え、総資産が増加したのに減収となり悪化しました。
?グループは、自己資金で神戸三木工場投資を行った為、流動性の急落などが引き起こされました。

B-Rサーティワンアイスクリーム?は、「未来」が弱かったのではないでしょうか。
未来の売上は、自社の過去から現在までの売上分析を基礎にして、外部環境のデータと突合しながら、予測していきます。自社の出店数の推移とショッピングセンター出店数の推移、各都道府県ショッピングセンターの売上の推移と人口推移など、どこか予測しきれなかった故の減収でしょう。更にフランチャイジーの店舗数は1,175店、直営店の店舗数は16店と圧倒的にFC店が多い為、FC店の財産状況や経営成績の把握を怠ると思わぬ閉店、減収に見舞われるでしょう。FC店舗の決算書を徴求するFC本部は多くありますが、経営状況の把握と指導に重点をおく本部企業は多くありません。加えて、FC加盟店募集に際し、需要予測が甘いまま出店させることの信用リスクも注意が必要です。

富士小山工場と神戸三木工場の生産能力はわかりませんが、富士小山工場12,010?と神戸三木工場17,629?の規模から、生産能力は倍以上になったと推定します。神戸三木工場竣工は、災害や事故等により、何らかの障害が発生した場合に重要な業務が中断しないことを目的にしているのであれば、過剰ともとれるW工場の結論かもしれませんが、自己資金割合を減らせば、流動性の急落は避けることができたでしょう。
まとめ
B-Rサーティワンアイスクリーム?は、需要予測精度を上げること、FCの経営状況を把握・管理すること、設備投資時に自己資金割合を調整すれば、急落は避けられたでしょう。

SPLENDID21NEWS第126号【2016年5月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。

sp21news126サーティワン

Facebook
X
Email
Print
Picture of 山本純子
山本純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
Picture of 山本純子
山本純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
関連記事

東宝 ZOOM解説会のご案内 日時:2024年11月27日(水) 20時~ 料金:下記 申込期限:11月25日(月) 正午 実施方法:オンライン(ZOOM) お申込み方法:ページ下部のお申込みフォームからお申込みください […]

東宝株式会社は、日本を代表するエンターテインメント企業として、映画・演劇・映像制作などのトップ企業です。小林一三翁が1932年に設立され、最近では「ゴジラ」シリーズや「シン・ゴジラ」といった世界的に有名な作品を手がけ、多 […]

新着記事
カテゴリーで探す
目次