今回は、鹿島建設株式会社、清水建設株式会社、第一建設工業株式会社を分析して比較しました。
売上規模は、上記順に、1,521,191百万円、1,497,578百万円、50,149百万円、従業員数は、18,519人、19,293人、886人と、第一建設の規模は、売上高も従業員数も他2社の5%に満たない規模です。
2014年3月期までの9期分析です。
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先ず、これだけ規模の違う会社を比較する意味があるのかという疑問を持たれた方も多いと思います。通常、財務分析は、実数(売上高、従業員数、利益額など)も財務指標として扱いますが、SPLENDID21では、財務指標として扱わず、全て比率の指標で構成されています(例:自己資本比率=純資産÷総資本×100)。大きな会社は分母も分子も大きく、小さな会社は分母も分子も小さくなりますので、「質」のみを抽出します。ですから、規模が違っても比較可能です。
ゼネコンと言われる鹿島建設、清水建設が売上3.3%の第一建設より、遥かに、企業力が低いことをどのように考えられますか。
企業力総合評価、営業効率(儲かるか)、資本効率(株主評価)は第一建設が圧勝です。鹿島建設、清水建設は受注した工事を下請けに発注するので、利益確保は容易に思えますが、そうでもないようです。
生産効率(人の利用度)は、鹿島建設、清水建設が勝っています。
資産効率(資産の利用度)は、売上と資産の関係です。3社あまり変わりません。
流動性(短期資金繰り)、安全性(長期資金繰り)は、第一建設が圧勝しています。
第一建設工業は、新潟市に本社を置き、FA事業(一括借り上げマンション事業)、コンクリート補修事業、土木事業、建築事業、線路事業、不動産事業を行っています。地元に根差した経営の一方、事業部は幅広く、優良な会社をベンチマークするなど、外部環境の分析を怠らない会社です。例えば、FA事業では大東建託、コンクリート補修ではショーボンドホールディングスなどをベンチマークしています。また、環境配慮でこれから廃れる可能性ゼロの電鉄会社を顧客としているところも指摘しておきましょう。
会社開示の、主な取引先は、JR東日本及びグループ各社、国土交通省、農林水産省、他主要省庁、 鉄道建設・運輸施設整備支援機構、日本下水道事業団、 新潟県、長野県、秋田県、山形県、他主要公共発注機関及び民間各社ですから、JR各社、民間各社を除き、厳しいと言われる国や地方公共団体であることに気付きます。それであっても営業効率天井値を推移していることは、業績を業界不況のせいにしてはいけない事を教えているように感じます。
まとめ
企業力はバランスで決まり、決して売上規模で決まるものではありません。ましてや、誰でも知っている会社が優良会社ではあるとは限りません。
成長のステージでは、ある程度、バランスを崩しながら、やり過ごす時期も必要なこともありますが、それにしても、「これ以上はダメ。」というボーダーラインを越えてはいけません。
貴方の会社のバランスは適切に取られていますか?知らない間に取り返しのつかない状況に嵌り込んでいませんか?
SPLENDID21NEWS第107号【2014年10月15日発行】をA3用紙でご覧いただきたい方は下記をクリックしてください。