今回はテクノアルファ株式会社を分析してみました。テクノアルファは、パワー半導体の製造装置を主として、海外の優れた装置・電子材料を輸入・販売する一方、2009年5月にLCD関連光学フィルム等の電子材料、機器輸出を主体としているコムテックを子会社化、2011年12月に吸収合併し、また、2011年 9月にNI LabViewと高い技術力・開発力を背景に計測システム・検査システム開発するペリテック社を子会社化し、メーカー機能を持った技術専門商社です。
それでは、2011年11月期までの5年間をみてみましょう。
企業力総合評価は175.24→180.89→153.06→177.69→171.42と高位を推移しており、2009年リーマンショックの影響で大きく谷を刻んでいますがすぐに回復。かなり立派な経営をされていると言えます。
営業効率(儲かるか)資本効率(資本の利用度)は、天井値を打っていましたが、リーマンショック以降、近年少し悪化してきているようです。営業効率の天井値を打った状況からはがれ落ちてくる過程で、M&Aをすることは、企業力を高める好機であるとのナレッジがSPLENDID21にあります。次の成長の為に会社を買うなど、秀逸な感覚を持った経営者であると言えます。
生産効率(人の利用度)は反転しながらも悪化トレンドです。テクノアルファは攻めの姿勢を貫き、従業員数は28人→28人→33人→35人→62人と推移しており、1人当り売上が悪化している為です。リーマンショックや、その痛手が癒えない場合でも攻めの姿勢で社員を増やしています。
資産効率(資産の利用度)は、青信号領域で良いようです。基本、商社ですので、工場など、大きな設備投資がいる訳ではないので、そのような結果となります。
流動性(短期資金繰り)は、天井値を打っています。1年以内に返済する負債が4億7319万円に対し、支払原資となる現金預金が6億7207万円あるのですから、支払いには全く困らない資金を蓄えているということになります。
安全性(長期資金繰り)は、天井値でしたが、2011年悪化し始めました。
固定資産が2億3438万円から6億6147万円と急増した為です。但し、固定比率も100%を大きく下回り、問題はありません。
テクノアルファの営業効率の下位指標を見ていきましょう。
売上高は、リーマンショックの落ち込みから、以前の数字には戻っていません。売上高総利益率は下がったとはいえ27.12%あり、製造業の京セラが29.84%比べれば、なかなかの数字であると言えます(一般に卸売業の方が、製造業に比べ売上高総利益率は低い)。商社である為付加価値が付けにくく、売上高総利益率が取れないという言い訳が必ずしも正しいとは言えないということでしょうか。
ここでM&Aについて考えてみましょう。
2011年 9月にペリテック社を子会社化、つまり製造業を子会社化した事実に注目して下さい。テクノアルファがもともと、利益率重視の経営姿勢で、商社であっても高い売上高総利益率を維持しており、更に製造業を子会社化していることが、テクノアルファの強みの源泉と言えます。
一般的に、企業は上図のような曲線を辿ります。導入期、成長期、成熟期を過ぎ、そのままにしておくと、衰退期に入ります。成熟期末期までに、次の成長の為の革新を起こし、下落を阻止します。新しい商品・サービス、新市場の開拓という革新を起こしていかねければなりません。ゼロからスタートするのではなく、今まで蓄えた資金をもとに、M&Aを行い、時間の短縮をしながら革新を起すのがM&Aを使った企業ライフサイクルの長期化です。
再度、上のSPLENDID21 のグラフを見て下さい。企業力総合評価、営業効率が、成熟期の企業ライフサイクルと重なっていることが形状で分ります。
テクノアルファの強さは、1つに利益率重視の経営姿勢、2つに企業ライフサイクルの見極めが秀逸である点と言えます。
まとめ
最近、引き算の経営で、無駄なものをそぎ落とし、高い利益率の筋肉質の経営を志向する会社が増えています。引き算の経営は、旧サンヨーの白物家電を中国企業に売却したパナソニックに代表されます。その一方で、M&Aを使って足し算の経営で利益率を確保する会社もあります。堅い経営が好まれる時代になりました。
SPLENDID21NEWS第78号【2012年5月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。