今回は、日本マクドナルドホールディングス株式会社を分析してみました。日本マクドナルドHDは8月27日、傘下の事業会社日本マクドナルドの原田泳幸氏が社長を退き、マクドナルドカナダ出身のサラ・カサノバ氏が就任しました。 原田氏は、2004年の社長就任から「100円マック」などを展開して「客数を増やして収益拡大につなげる」戦略を掲げ、2006年12月期から営業利益は6年連続で増益としました。しかし、ここ数年は、収益重視の定番商品中心の戦略が不振で、総菜に力を入れるコンビニなどに劣勢を強いられ、この結果、マクドナルドの連結業績は12年12月期に9年ぶりの減収減益に陥り、2013年12月期も2年連続の減益を見込んでいました。交代劇は「売上回復(を目指すこと)もひとつの要因」と報道されました。
2008年から2012年12月期までの分析です。
企業力総合評価は、112.32→128.77→141.89→149.51→159.41と素晴らしい成長を遂げています。
指標を縦覧すれば、儲かる会社になり(営業効率↑)、投下資本に対し十分利益を得られるようになり(資本効率↑)、1人当り売上も増えて(生産効率↑)、お金がいっぱい入ってきて(流動性↑)、財務体質が着実に改善した(安全性↑)と言えます。
営業効率、資本効率は天井値をつけ、2012年下落しました。
生産効率は、赤信号領域ながら、改善トレンドです。飲食業は、業種特性から生産効率が悪い会社が多くあります。資産効率(資産の利用度)は、青信号領域を悪化トレンドです。
流動性は、企業力総合評価と同じく、素晴らしい改善を見せています。安全性は、ほぼ天井値です。
営業効率の下位指標を見てみましょう。
4期連続減収で1116億円の売上が減少し、売上総利益も88億円減少しました。これだけ書くと評価は低くなってしまいますが、売上高総利益率は16.97%から20.40%へと3.43%も改善しています。
(注:マクドナルドは店舗コストも売上原価に含めていますので売上総利益は店舗利益を指す。)
FC収入の利益率が直営店利益率を大きく上回っています。当然、FC収入を増やし、直営店売上を減らすという選択になり、
直営店売上が減り、FC収入が増加しています。
念のため、直営店数とFC店数の推移を調べてみました。上記グラフと整合します。また、直営店1店舗当たりの売上高の推移を調べてみました。
冒頭の青字の文章「原田氏は、2004年の社長就任から・・・売上回復(を目指すこと)もひとつの要因」と報道されました。」を再度読んでみて下さい。売上減少(減収)がひどく、更に減益にもなったので社長交代となったように読めますが、数字で検証してみれば、そうでもありませんね。
同社は、意図的に減収にしていたのです。FCの売上総利益率の方が良いので、直営店を減らし、FC店を増やしたので当然、直営店売上が大きく減ります。FC売上は、ロイヤルティー、賃貸料、広告宣伝費負担金収入等ですので、FCが増えても売上高の増加は大きくはありません。
コンビニのお惣菜との競争が激しくの下りは検証しようもありませんが、不採算店から辞めていきますから、当然、店舗当たり売上は改善してきています。問題は、このやり方に限界が来たことではないでしょうか。(近似値線がなだらかになった。)
まとめ
直営店の利益率下落を止めることが必須でしょう。直営店の利益率が下がれば、FC店は経営が苦しくなり、評判が悪くなり、いくらFCを増やそうにも加盟者がいなくなります。次の一手を出すための社長交代であったのではないでしょうか。
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